ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」51 インターネット上の差別問題に対抗する

 インターネットをめぐる差別事情は、厳しさを持続させています。差別情報で、どれだけのネットユーザーがどのような影響を受け、どのような行動に結びついているのかがわからない中で、マイノリティが権利を侵害されるような状況にあります。どのような取り組みが必要なのかについて書いてみます。

1 法令による差別行為(投稿)の禁止、事業者のポリシーやコミュニティルールへの差別投稿の禁止の位置付け、違反に対するアカウントの停止や凍結

1)差別や人権侵害を定義した上で、差別行為を規制することが必要になります。三重県議会で可決され、施行された「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」の第2条では、次のように定義されています。

一 人種等の属性 人種、皮膚の色、国籍、民族、言語、宗教、政治的意見その他の意見、年齢、性別、性的指向、性自認、障がい、感染症等の疾病、職業、社会的身分、被差別部落の出身であることその他の属性をいう。
二 不当な差別 人種等の属性を理由とする不当な区別、排除又は制限であって、あらゆる分野において、権利利益を認識し、享有し、又は行使することを妨げ、又は害する目的又は効果を有するものをいう。
三 人権侵害行為 不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)をいう

 そして第4条では、

何人も、不当な差別をはじめとする人権侵害行為をしてはならない。
2 何人も、共通の人種等の属性を有する不特定多数の者に対して当該人種等の属性を理由として人権侵害行為をすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該人種等の属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を公然と摘示する行為をしてはならない。

とされています。これはインターネットでの行為(投稿)にも当然、適用されます。マイクロアグレッション、現代的レイシズム、寝た子を起こすな論や部落分散論、当事者責任論などを行為規制の対象にするのは容易ではなく、教育や啓発で解消する問題として位置付けることからスタートしていき、解消されない事案が積み上がる場合は、新たな対処を講じることが良いと考えます。

2)法令に基づき、各種サイトのポリシーの禁止規定に差別行為を位置付け、差別投稿が不可能になるシステム、差別投稿が自動的に非表示や削除されるシステムの構築を目指す必要があります。業者の自主規制は、法律があってこそ、有効に機能するものです。

 また、禁止行為が一定程度、繰り返された場合は、事業者によるアカウントの停止や凍結といった措置が講じられる必要があります。

2 モニタリング

1)SNS、動画サイトおよびコメント、ニュースサイトのコメント、掲示板等から差別投稿を発見することが求められます。

2)発見した差別投稿に対し、削除依頼、削除要請、通報を行うことが必要です。

3)差別投稿のモニタリングは、今の法律や条例、計画や方針、事業等では、インターネットを通じて起きる差別に対抗できていないという立法事実を集約することになります。収集した差別投稿は、次の差別解消に有効な施策の展開につなげる必要があります。

3 相談・救済

1)インターネットを通じて差別被害を受けた人たちが相談できる窓口が必要になります。人権のこと、インターネットのことに関し専門性を有する人選が求められます。

2)相談の有無に関わらず、差別投稿に対し、各種サイトのポリシーなどに基づき、削除依頼や通報を代行する機関の設置により、被害者の負担を軽減することが求められます。

3)差別投稿の中でも、個人を特定し、部落差別によって誹謗中傷や侮辱的な被害を受けた場合、発信者情報を開示する請求手続きを行うなどの支援や、訴訟に関し、数十万円の費用がかかるため、経済力のある人しか訴訟を起こせないというのはあってはならないので、費用援助が必要になります。

4)運動としても、発信者情報の開示請求を積極的に行うといった新たな司法闘争的要素も必要になります。もし、それが進めば、部落差別投稿についても発信者が特定されるとなり、それは抑止につながります。

4 教育・啓発

1)情報リテラシー、メディアリテラシーに関して、基礎的な認識を持つことができる教育機会が必要になります。国語や算数ほど出なくても必須にしなければならないと考えています。

2)モニタリングや通報スキルを向上するための講座や研修などが必要になります。

3)マジョリティの特権、アンコンシャスバイアス、マイクロアグレッションなど、差別問題に関して自分とのつながり、自分の課題などを見出し、差別解消に向けた行動につながる教育内容が求められます。

4)個別の人権課題に関する基礎知識を得て、その後、自ら学び、認識を高めていこうとする教育内容が求められます。

5 情報発信

1)SNS、HP、動画サイト、ブログ等で人権情報・ポジティブな情報を積極的に発信することが求められます。

2)有益なコンテンツや記事をSNSなどでシェアすることで、SNS等でつながる人たちに人権情報等を届けることができます。

3)SNSの広告機能を活用し、人権情報やイベント情報などを広く発信することができます。

4)差別投稿がさまざまなサービスで行われています。そうした差別を放置せず、カウンター(反論)したり、フェイクに対してファクトを発信することが求められます。

 その他にも、さまざまな取り組みがあると思います。積極的にインターネットを活用し展開していきましょう。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

2件のコメント

  1. この法令が役に立つよう、やれることをやっていきたいです。

    1. いつもありがとうございます。ともに取り組んでいきましょう!

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