ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」54 テレビで部落問題を取り上げるのに必要な視点って、こんな感じ?

 部落差別解消推進法が施行されて以降、マスメディアで部落問題が取り上げられるようになり、新聞やデジタルメディアで取り扱われ、NHKやABEMAにおいては映像で報じられるようになってきました。一方で、Yahoo!ニュース・ABEMA prime・YouTube等のコメント欄には、現代的レイシズムを筆頭に、寝た子を起こすな、当事者責任、部落分散論が数多く投稿される状態となっています。

 私としては、コメントに寄せられる差別は看過してはいけないと思っているので、そうした現代的な部落問題の誤った捉え方に一石、二石と投じられるようなものが必要ではないかと思っています。今回は、この辺りについて書いてみたいと思います。

1 部落問題が有する特殊性や個別性への理解

 マイノリティが部落ルーツを何故、カミングアウトしたり発信するのか、その意義について、国籍や民族や心身に関するものや社会的登録などにおいて、他の人権課題のようなマジョリティにとって「明白な違いがない」側面と、地縁や血縁などの「違い」を理由にした差別問題であることを取り上げる。

2 部落出身者のアイデンティティや定義の曖昧性

 部落においても人は転入出している。部落差別は、見なされる差別という側面があること、マイノリティの自覚とマジョリティの判断基準は必ずしも一致しないこと、マイノリティ同士、家族間でもアイデンティティの形成の違いがあることを取り上げる。

3 部落問題理解のための多角的なアプローチ

 他の人権課題におけるカミングアウトやマイノリティ性を意識させられているなどの問題を通して、部落問題を捉えるアプローチをすること。

4 マジョリティ特権とアファーマティブアクションの学び

 「必要不可欠な情報ではないので、言わなくていいのでは」という主張が、マイクロアグレッションに該当することと、部落にルーツのないマジョリティは意識させられたり、アイデンティティとまではならないというマジョリティの特権があることを取り上げる。

 マジョリティが受けている恩恵を初め、マイノリティであることによる不利や不平等を是正するための措置として実施されるアファーマティブアクションについて取り上げる。

5 差別がもたらす深刻性や過去の悲劇への理解

 「寝た子を起こすな」では、今ある差別に加担することになること、マイノリティへの権利侵害を容認する結果につながること、ネットのように有効策を講じないと悪化し、ウトロの放火のようにヘイトクライムにまで悪化することを取り上げる。

6 差別は制度や慣習、構造的問題であることの認識

 差別は意識の問題ではなく、制度や慣習、構造の問題なので、寝ることはなく起き続けていることを取り上げる。この観点からも寝た子を起こすなを否定する。

7 無意識の差別や偏見への自覚

 人は社会構造や社会意識などの関係により差別するものであり、差別は意図は関係なく結果の問題であること。仮に差別的な発言をした場合、個人が責められてはいけない。ただし、開き直りなどになると話は別。大切なのは、起こした差別にどう向き合っていくのかという、差別をしない・支えない・なくす行動につなげること。無意識に差別をしてきた可能性がこれまでの人生であることを自覚することなどを取り上げる。

8 発信する側の能動的な学び

 番組で取り上げる際、マイノリティや有識者の意見や思いを反映することを通して、懸念している問題を払拭すること。番組関係者が知ることを放棄せず、積極的に学ぶこと。

9 マジョリティ差別論、現代的レイシズムへの対処

 コメント欄がヤフコメ化し、利権や優遇、逆差別などの主張が溢れた。この問題について、そろそろ真剣に向き合い、発信・反論していく機会をつくること。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA