ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」52 「特権」で見る「選挙」を取り巻く「歪み・偏り・不平等」

 現在、参議院選挙の真っ最中です。2022年7月10日は投票日となり、選挙結果が明らかになります。一部のマスコミでは現在の与党が過半数を獲得するだろうと予測されている状況です。

 「特権」について、この間、あれこれ書いてきましたが、この選挙に関わっても「特権」がさまざまな形で影響していると思っています。つまり、「公平・公正でない」と言いたいわけです。これは民主主義にも関わってくる重大な問題ですが、この「民主主義の定義や解釈」は人それぞれです。私は、現在の選挙制度は民主主義が成立しているとは思っていません。しかし、人によっては「今の選挙制度自体、民主主義の最たるものだ」という人もいるので、そう思っていない側からの問題提起になればと思って書いてみました。

政党が意識する属性

 まず、選挙では有権者に対し、各政党が掲げる政策を訴えかけ、票を獲得しなければなりません。有権者には、さまざまな属性があります。今の選挙制度では、国籍については日本国籍以外の人は除外されていることから、政党が国籍を意識した政策を提案すること自体は少ないように思いますが、海外にルーツがある人たちへの政策について否定的な政策を掲げ票を得る政党もあることは事実です。

 既存政党が意識しているのは、年齢、経済力(所得)、所属団体、就労形態、学歴、家族構成、性などではないかと思います。既存政党は、特定の属性を有する有権者から票を得られるシステムが構築されていると思います。問題は、ここに偏りや特権があると思っていて、そのことを見ていきたいと思います。

人口動態で見る「年齢」という特権

 まず、年齢層で見る国内の人口動態です。「男女」の2種類で表示されており、マイノリティは位置付けられていません。おそらく「戸籍」を元に作成されていると思われます。1990年の日本の年齢で見る人口の状況です。出典は「国立社会保障・人口問題研究所」です。生産年齢人口がとても多く、前期老年人口・後期年齢人口は当時はマイノリティでした。なので、政党が狙う年齢層は20歳から65歳の層になり、最も多い40代やその次の50代がターゲットになり、その世代のニーズに応えられる、票が得られる政策を訴えかけることで票を得ることができます。

 次の図は、上の図から15年経った2005年です。一気に後期後年人口と前期老年人口が増え、50代中間から後半の年齢が増え、次いで30代が増えていきます。年少人口の減りが異常です。投票率の高い50代以上に向けた政策を打ち出すことが選挙の主流になっていきます。また老年人口に関しては「年金」に関する政策が票を集めることにつながることがわかります。「100年安心」だとか、年金を増やす、または減らさないみたいな政策は、こうした層にウケるわけです。

 次に、さらに15年経った2020年の現状です。「前期老年人口」「後期老年人口」がさらに増えています。今では、大体4000万人が年金を受給しています。ざっくり考えても、自分の老後の安心を保証してくれる政党に多くの票が集まることになります。若者の投票率が極めて低い。投票している若者は既存の与党政党であり、「若者の支持を得ている」と言えるほど、20代や30代の有権者数に対する投票者数は低い状態にあります。

 要は、年齢は「特権」の一つであり、年齢が高い方がマジョリティです。権力を行使できる、権力を持ち得やすい、年齢が下の者の権利を制限できる中で、選挙だけではなく、日本社会全体が年齢の高い人たちが権力を握り、社会を動かしているも、その恩恵は一定の特権を持った年齢層に偏っていることが問題だと思っています。これだけの年齢の偏りがあるなかで、今やマイノリティに置かれた若い世代の声やニーズに応えようとする政策は、まぐれで日本社会の多数派層を獲得しているマジョリティ層、年齢が高い層のニーズへの政策が優先されることになり、若い世代への未来保障につながる政策は生み出されにくいと思っています。その世代に向けた政策を訴え、仮に20代の多くのニーズに応えることができ、票を獲得できたとしても、高年齢層の票には数的に勝てないということを言いたいわけです。

 そして、おさらいですが、特権は、偶然、まぐれで得られるものなので、努力で獲得したもの・できるものではありません。

 次世代のこと、10年・20年先の日本のことを見越しているような論調でありながら、現実は30年近く、「成長」をさせることができなかった政治の責任は、票の獲得、既得権益を守るために、こうした特権を有する特定の偏ったマジョリティ層に対する偏った政策がもたらした結果です。今、日本社会は、かつて経験したことがない、とてつもない少子化と、とてつもない超高齢社会をもたらしています。かつ、日本を総貧困化させてきました。日本が今後、どのようになっていくのかを諸外国は見ているという主張も出てきています。

「性」に関する特権

 国会や地方議会においても、民主主義が成立していると思っていません。下記の統計を見れば一目瞭然です。国内において「女」の数が多いにも関わらず、意思決定権を有する一つの属性である議員では、これほどの「格差」が生じています。まさに「女性がいない民主主義」であり、これを民主主義と言っていいのかということです。

 そして、その不平等は国会議員の「年齢」「性」という特権でも顕著に現れています。今の日本では、「高齢層」と「男」という属性に合わせて、異性愛者、シスジェンダー、日本国籍、健常者に極めて大きく、優位に偏っている、逆に言えばマイノリティには生まれ持って努力など無関係に不利で不平等な状態に置かれるような社会の中で、民主主義が成立しているといえる時代を日本は一度も迎えていないのではないかというのが、私の持論です。

『国会議員要覧 令和三年二月版』、衆議院ホームページ(2021年6月3日現在)及び参議院ホームページ(2021年6月8日現在)より内閣府男女共同参画局作成(人数、年齢は2021年6月8日現在)。

 ちなみに、諸外国と日本の国会議員に占める女性割合が示されていますが、日本の国会議員の偏りは、国際社会から見ても顕著です。男・高齢層・日本人・健常者・異性愛・シスジェンダーなどのマジョリティ属性を有する議員の多くは、努力せずとも得られる特権を簡単には離しません。

超特権を有するマジョリティに特権を手放すことができるか

 60代から80代は、これまで日本の人口ピラミッドの一番大きなところにいて、総じてこの世代のニーズが政治や社会に反映されやすい状態でしたし、今も変わりません。それはマジョリティだからです。

 それに比べると今やマイノリティである20代は選挙に出る力もない、お金もないという状態にマジョリティによって置かれた中で、今の政治を変えるようなことは、とてつもなく難しいと思っています。とはいえ、諦めたり、何もしないわけにはいきません。

 若い世代に向けた主権者教育がとても大切だと思っていますが、同じようなレベルで、まぐれで権力などの力を持つことになった今の60代以上が積極的に特権を手放し、他の世代に譲り渡していくようなイニシアチブを作っていくことが重要だと思っています。これは政治に限らず、運動団体も企業も、各種団体も同様です。ここでの指摘は、これから十分、安定した生活を送れるような状況を獲得できている人ということです。

 しかし、既得権を獲得した人たちが、その特権を簡単に手放すことは極めて少ないと思っています。今、この社会で、組織内で残されている課題は、自分たちの世代の責任なので、自分たちの世代が責任を持って変えるみたいなことを言いながら、特権を手放さない言い訳みたいなものにしている等々。政治がこうだからなのか、日本社会のあちこちで、このような特権を手放さず、組織や社会を後退させるような状況があると思っています。

 あるインターネットメディアに出演した某国会議員は、今回の内容に関する指摘に対し、「若い世代の努力が必要だ」と述べていました。このような考えを述べる人の多くは、ほぼ間違いなく、自分の特権が見えていません。自分と同じように努力すれば、若い世代も何らかの結果につながると本気で思っておられる可能性が高いです。人生のスタートラインから大きな差がついていて、自分がゴールに近い位置にいることに気づいていません。

 自分がまぐれで得た・得ている経済的・文化的・社会的な特権への自覚なしに、今の日本社会を牽引する立場にあり続けるのは、日本の行く末は今の変わらず、さらに厳しい状況がもたらされるのだろうと、不安でしかありません。とはいえ、諦めたくない中で、どこに、何に光明を見出せばよいか、とてつもない大きな壁が立ちはだかっています。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

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