ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」70 逆差別って主張、本当に正しい?part3

 前回に引き続き、逆差別について書いていきます。前回の内容はこちらです。

 国や地方自治体がめざしたのは、都府県民、市区町村民の平均値まで被差別部落の人々の生活を高めることでした。都府県民の平均値をゼロとした場合、被差別部落の人たちは年収、就労率、進学率等々が平均してマイナスの位置に置かれていました。このマイナスは簡単にはゼロにならない、しかしカンフル剤を打ってでもマイナスをゼロにする必要があるということで、特別な施策が展開されてきました。

 マジョリティよりも優位になるための特別措置では決してありません。そもそも、人生のスタートラインから、すでに差がついてしまうような状態に、構造的に置かれてきた、そしてこの差は、人生がスタートするとともに、さらに開いてしまう状況にある、よって講じられてきた必要不可欠な措置です。利権でも、優遇でも、逆差別でもありません。不利や不平等な状態が努力の有無以前からすでに生じてしまっていることへのあるべき施策を講じているということです。

 イメージを持っていただくために、この動画をご覧ください。

同和教育の重要性は今でも

 長年にわたる被差別部落に及んだ差別とその影響は、直接影響を受けた世代にとどまらず、親から子、子から孫へと引き継がれるように、生活面でのさまざまな課題が継承されてしまっています。このような負の連鎖を断ち切るために、自治体によっては特別措置を継続していたり、隣保館や教育集会所でのさまざまな体験活動や教科学習などの取組、学校では、すべての子どもたちの学力や進路を保障するための同和教育活動が展開されています。

 同和教育とは、単に部落問題について授業で習うといった狭義なものではありません。部落差別を中心に、あらゆる差別をなくすための教育として、知識を持つことをめざすのではなく、社会を主体的に生き抜く力の育成を目指した教育活動です。みなさんが受けてきた「同和教育」と思われているものは、実はそうでない可能性があります。部落問題について学ぶことが同和教育ではないし、教師や学校の進め方が、ほとんど印象に残らない学習、否定的な価値観を持たされた学習内容であったパターンは、少なくないようです。これについては、今後ブログで書いていきたいと思います。

 同和対策事業をはじめ、障害者への施策、海外にルーツがある人たちへの施策、女性への施策、性的マイノリティなどへの施策は、積極的差別是正措置とも言われます。特別措置というより必要不可欠措置です。しつこいですが、人生のスタートラインからマジョリティとマイノリティに差が生じてしまう社会構造にあります。優位な側が、優位であることを自覚していかなければなりません。努力しなくても、いくつも人権がすでにほしされている恩恵が備わっていることを認識できないと本質が見えてきません。

今も残る被差別部落の課題

 課題は今なお残されています。かつての文字の読み書きができない非識字であった曽祖父母や祖父母が置かれてきた影響は、子どもに絵本の読み聞かせができない、宿題を教えられない、新聞や広報、通信などが読めない、就ける仕事が限定的、生活経験が乏しくなる等をもたらしました。これは一朝一夕で解消できるものではありません。親が本を読まない、家に本がない、絵本の読み聞かせをしないなど、未だ活字文化が家庭に根付かない、学習塾や習い事などに通わない、知っている仕事の種類が少ない、低学力傾向にあるなど、現在にもさまざまな影響をもてらしています。離婚自体に問題があるなど微塵も思っていませんが、経済的に不安定な点で言えば離婚率が高く、シングルマザーの割合が多いことについても何らかの影響を受けている可能性があります。

相次いだ不祥事〜ただし一般化してはいけない〜

 部落解放運動の関係者の中から、公金の不正受給をした人、公金を私的に流用していたことで業務上横領で逮捕された人、5年間にわずか8日間しか出勤していなかったにも関わらず約2千万円の給与を全額受け取っていた運動のリーダー等々の不祥事を起こす人が出てきたことは事実です。極めて重大な問題であり、許されるものではなく、二度と同様の問題を起こしてはいけません。しかし、このような問題を運動関係者の誰もが起こしているはずもなく、全体のパイからすれば極めて少数の人が起こした問題です。同じ組織に所属していたとしても、一度の面識もない人が起こしている都府県や市区町村すら違う人が起こした問題の責任を、同様の組織にいるというだけで非難されても、本部の役員でない圧倒的多数の人たちは、どうすることもできません。それを運動関係者すべてに該当していると捉えたり、運動関係者でもない被差別部落にルーツのある人たちに反映するようなことがあってはなりません。被差別部落ではない自治会や関係のない団体で不祥事が起きた際、「被差別部落でない」ことを理由に攻撃されたり非難されることは、まず起き得ません。運動に携わる圧倒的多くの人たちは無償で運動を展開しており、また運動の若手に食事や遊ぶためのお小遣いなどを個人的に渡している人も少なくなく、支出している人たちが割と多くいるというのが真実です。

 今回の連載は一旦終了です。ご覧いただき、ありがとうございました。

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