「差別」という言葉を聞いて、どのようなイメージをもたれ、人にどのように説明されるでしょうか。
前回のおさらいです。
マジョリティ(社会的多数派)にとって「差別」とは、特定のマイノリティ(社会的少数派)性を有する人に対する差別発言や差別落書き、インターネット上の差別投稿、就職差別や結婚差別、土地差別などについて、悪意をもった個人がおよぼす問題と捉えていることが多くあります。これ自体、「間違い」というわけではありませんが「正解」ではありません。
マイノリティにとっての「差別」とは、前述した内容を含みますが、それ以外に、制度・事物・慣習・構造に関わる問題であり、日常的なものと捉えています。いくつか例を紹介します。ただし、必ずしもマイノリティすべてが同じ状況ではないことを押さえておきたいと思います。
では、具体例を紹介していきます。
例えば、機能や能力面の「障害」の程度によって、①スーパーで特売品などがあちこちに並び通路がせまくなると買い物ができなくなる、②健常者のように自分のタイミングで乗る電車を選んだり変更したりできない、③駅にエレベータがないため反対ホームに行くには駅員に連絡するなど健常者にはない負担がある、④「障害」によっては銀行等のATMが利用できない、⑤最寄りの小学校に子を入学させるためには交渉しないと通えないなどです。
性的マイノリティによっては、
①同性愛者がいない前提で友人間や職場などで恋愛話が展開される
②役所の申請書類等には、何を指すのかわからない「性別」記載欄があり、しかも「男・女」の2種類しか記載がなく、ノンバイナリーやマイノリティはいない存在として扱われる
③「男・女」の2種類しか用意されていないトイレや更衣室に入れない・入りづらい
④異性愛パートナーは法的にパートナー関係が自動的に認められているのに、同性愛パートナーというだけで結婚が法的に認められていない
⑤身近な人へのカミングアウトをしなければならない壁が立ちはだかる
などです。
「女」の場合、
①結婚や子育ての関係で仕事を辞める・働き方を変えることを当然のように思われる
②(女である)自分の買い物なのに店員が「夫(男)」ばかりに話しかける
③会議などの場で(女である)自分の意見をすべて聞いてもらえず途中で(男に)割り込まれる
④夫婦ともにテレワークになった際、夫のテレワークが優先される
⑤給付金を受け取る世帯主の多くが男であり、かつ使い道を決定できる状態になった
⑥公共交通機関などの利用する際や夜道を帰る際、性被害への不安を感じさせられる
などです。
被差別部落にルーツがある人の場合、
①非識字の影響で投函されるチラシの内容、自治体の広報、各種申請書類が理解できず申請等ができない
②非識字でレシピ本が読めないが、家族に同じ食事を出すわけにはいかず、日々、料理の味を目分量と何度も味見し料理をつくる祖母
③結婚差別により、親や親戚の反対を押し切って結婚をしたため、パートナーと子が実家に帰る際、「だから部落はだめだ」と思わせないためにも、子に対し常に礼儀正しさを求めている
④交際相手等に部落にルーツがあることについてのカミングアウトを迫られる
などです。例をあげれば、こんなものでは済まない、こうしたものも差別の日常です。
法律や条例、企業等の採用条件や就業規定などの諸制度、校則等々、制度面や構造的な差別は「日常的」にマイノリティであることを意識させ、生きづらさを強いられ、不平等な状態に置かれています。
ここからは前回のブログで掲載した内容なので、重複しますが、あらためて。問題は、マジョリティがマイノリティに不利をもたらす制度や慣習、構造に気づけないことで、結果的にそれらを「容認する」「加担する」状況を招いていることです。「構造的差別のこと、マイノリティに及ぶ不利や不平等を知らないということは、その差別構造を支えてしまう側に立つ」といっても過言ではないと思います。「無関心」でいられても「無関係」ではいられないということです。
こんな本があります。とても学び深いものですので貼り付けておきます。
今回はここまで。次回は「マジョリティの特権」についてご紹介していきます。ご覧いただき、ありがとうございました。
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