ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」14 構造的に貧困や困難を強いられる人たちの声を聞く(前編)

 貧困がもたらす厳しい現実を解消すべく取組を具体化するためには、実態把握からはじめなければなりません。ある市の関係各課をはじめ社会福祉協議会や教育アドバイザーなど、さまざまな団体とともに、貧困問題の解消に向け、市内に在住する児童扶養手当を受給している世帯にアンケートを実施し、調査結果をもとに問題解決のための政策提言を実施しました。

 アンケートは、2015年の年末に実施、当時、対象世帯は748世帯、アンケートにご協力いただいたのは235世帯で 有効回答率31.4%でした。7割近くがアンケートにご協力していただけなかったわけですが、それほど切羽詰まった状況に立たされていたり、行政に対する不信感などを抱いている可能性が高いことなどが伺えました。

 前編では、グラフを使って、児童扶養手当を受給している世帯の現状について紹介します。

 まず、今回の調査にご協力いただいた方々の属性などについてグラフを使って紹介します。

 回答者の年収です。300万円未満の人たちが8割を超えており、17%は100万円未満で生活しているという信じられない状況です。

 次に、家族形態です。完全母子家庭がほぼ半数であり、祖父母のいずれかと母親と子という家庭が4割と圧倒的に母子家庭が貧困の状態にあることもわかります。

 次に、主な収入を複数回答で聞きました。就労収入が9割ですが年収を見ても低賃金であったり、子育てや家事等の関係で労働時間が短いことが伺えます。公的手当が6割以上、養育費をもらっているのは17%と2割にも満たない状況です。

 次に、健康診断を受けているかどうかについて聞いたところ、「受けた」は7割ですが、「受けていない」が2割を超えています。

 「(健康診断を)受けていない」理由がこのグラフです。1日、仕事を休むことで収入が減る、子育てや家事に追われ、子どもを預けられる身よりもないので受ける時間がない、費用もかかるため健康診断に使うお金がない、「受信方法がわからない」が1割近くもありました。

 これは、経済的な支援等についての認知度の結果です。黄色の「知らない」が問題であり、公的年金制度を知らないが3割、就学援助が17%、福祉資金の貸付制度は6〜7割以上が知らないとなっており、必要な人に必要な制度が届いていない典型例です。

 グラフを見ただけでも、調査対象者が置かれている現状の厳しさが明らかになっています。児童扶養手当という公的支援につながっていると安心できる状況にはないということです。

 後編では、調査対象者の実際の声と、問題解決に向けた必要な政策について紹介します。

 このような本がありますので、紹介します。

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