ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」92 「ビジネスと人権」基礎基本 統一応募用紙の運動や取組の学びとともに、労働者の権利についても学ぶこと

 経済活動がグローバル化し、サプライチェーンが国境をまたぐようになって久しいなか、企業活動は日本に在住する人たちをはじめ、世界中の人たちに影響を与えるようになっています。そうしたなか、事業を進めていくプロセスで、さまざまな人権侵害が発生しており、被害を受けている人たちの人生、命、生活を脅かすような事態となっています。こうした人権侵害を放置することは「責任ある企業」とは決して言えない、そして放置できない社会問題です。「企業の社会的責任」は、グローバル化がますます進む中で、重要度を増してきています。日本においても、最近の例では、ビッグモーターの腐敗や不正、従業員へのハラスメント、旧ジャニーズ事務所の所属タレントへの性暴力とそれを容認してきた構造的問題、宝塚歌劇団における劇団員へのハラスメントや人権侵害とそれらを容認し隠蔽してきた構造的問題などは、まさに「人権軽視」の結果が招いた深刻な問題です。

 このように未だ国内外において深刻な人権侵害が発生していること、対策を講じれば未然防止が可能であるにも関わらず、人権への認識の不十分さと脆弱な取組によって問題が複雑化・悪化しています。今、地球規模で「ビジネスと人権」が、これまで以上に重要視されるようになってきています。

企業と人権をめぐる動向

 1948年、世界人権宣言が採択され、66年には国際人権規約が発行され、日本は社会権と自由権、双方の規約に批准しました。98年には、国際労働機関(ILO)が労働における基本的原則及び権利に関する宣言を採択し、労働や企業に関する権利について強調されるようになっていきました。2000年には、「国連グローバルコンパクト」が発足、2010年にはISO26000が出されます。

 そして2011年、国連は「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択、その4年後にはSDGsが採択されます。日本では、2020年にビジネスと人権に関する行動計画を策定、2022年には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。このように日本においても国際社会に遅れをとらないような人権への取り組みが求められています。しかし、先進国で国連が発行した条約への加入数が少ないこと、各条約や規約の委員会からの勧告を無視する割合が高いこと、同性婚を認めていないこと、国会議員によるヘイトスピーチや差別言動が絶えず発生していることなど、深刻な状況となっています。国や政府のあり方が市民や民間事業者にもさまざまな影響を与えています。

サプライチェーンとは

 サプライチェーンとは、製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れをさします。サプライチェーンの概念は自社だけでなく、他社や協力会社などを含めたものになります。

 例えば、自社がメーカーである場合、部品メーカーや材料メーカーなどから製品の製造に必要な部品や原材料を仕入れて製造します。また販売では、配送業者や卸業者、そして小売業者が関係してきます。サプライチェーンでは自社の業務だけでなく、商品などが製造されてから販売され、消費されるまでの流れ全体を捉えます。

 具体例として、コンビニの弁当のサプライチェーンをあげてみます。まず、弁当の主な原材料である米や野菜、肉を生産されている業者があります。コンビニの店頭に弁当が並ぶまでには、生産者、集荷販売業者、中食事業者、小売店などが登場します。そしてこういった関係者間の取引がつながっていくことで、私たちはコンビニでお弁当を買うことができます。弁当の容器であるプラスチック製品なども同様です。原材料の調達者がいて、原材料を配送する業者がいて、原材料を加工する業者が加工して、できた商品を運ぶ物流業者がいて、運ばれた商品を販売する小売業者がいて、消費者が消費するという一連の流れがあるわけです。

 例えば、中食事業者は生産者などから仕入れた米や野菜、肉を加工し、弁当を製造します。この時、製造される弁当は、コンビニ側の需要に応じて製造・出荷され、店舗に並んでいます。

 このように、弁当が私たちの手元に届けられるまでには、サプライチェーンを構成するさまざまな関係者の企業活動があり、それが連なって成り立っているということです。

人権リスクの例

 これまで、先進国のなかで、グローバル企業が途上国で事業展開する際、このサプライチェーン上において児童労働や強制労働、地域住民の土地の略奪、森林伐採や汚染物質の投棄、海洋放出などによる環境破壊、関係者への差別や人権侵害等を発生させてきています。企業において人権に対する責任ある行動が強く求められるようになっています。企業の事業経営等に関する人権リスクの事例をあげていきます。

1)従業員を雇用している使用者が、労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わないこと。

2)使用者が法律で定める最低賃金額に関わらず、労働者とその家族が生活を送るために必要な賃金を支払わないこと。

1)週8時間×5日の労働時間に加え、36協定で定める時間外労働の上限(月45時間・年360時間)を超えて、臨時的な特別の事情なしに労働させること。

2)適切な休憩を取得させない、取得を妨げること。

1)労働に関係して事故等で負傷すること、疾病(人の身体、精神又は認知状態への悪影響)の発症がすること。

2)快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じた労働者の安全と健康の確保が行われないこと。

 傷病や失業、労働災害、退職などで生活が不安定になった際、健やかで安心な生活を継続するために、健康保険や年金、社会福祉制度などによる現金・現物等の給付に差別なくアクセスする権利が侵害されること。

 優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、労働者の就業環境が害されるもの。単発的か反復的なものであるかを問わず、身体的、精神的、性的又は経済的害悪を与えることを目的とした、又はそのような結果を招く若しくはその可能性のある一定の許容できない行為及び慣行又はその脅威のこと。

 職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動を受けたりすることにより就業環境が害されること。

 労働者の妊娠や出産、育児のため勤務時間の制限、育児休業等の申出や取得に関して、職場において上司や同僚からの言動により、当該労働者の就業環境が害されること。

 職場において、働きながら家族の介護を行う労働者に対し、介護に関する制度利用を妨害したり、上司や同僚からの嫌がらせしたりする等の言動により、当該労働者の就業環境が害されること。

 処罰に及ぶことや、処分を匂わせる行為によって強制され、また自らが任意に申し出たものでないすべての労働により、自由意思で働き、自らの仕事を自由に選ぶという基本的人権を侵害されること。

 本人の意思に反して居住地や移動を決定すること、自由な選択を阻害すること。

1)使用者が労働者の有する労働組合加入の自由決定権を侵害したり、使用者が従業員による結社の決定を妨げたりすること。

2)労働者が労働組合に加入しない、又は労働組合から脱退することを雇用条件としたり、組合員であるという理由や、労働時間外又は使用者の同意を得て労働時間中に、組合活動に参加したという理由などで解雇されたり、その他の不利益な取扱いをされたりすること。

 外国人であることを理由に賃金、労働時間その他の労働条件等において差別的な扱いを受けること。

 法律で定められた就業最低年齢を下回る年齢の児童(就業最低年齢は原則15歳、健康・安全・道徳を損なうおそれのある労働については18歳)によって行われる労働のこと。

 インターネットや情報通信技術を利用したさまざまなサービス、AI(人工知能)など新しい技術の普及に伴い、人々の名誉毀損やプライバシー侵害、差別等の人権問題が生じること。

1)私生活、家族、住居、又は通信に対して恣意的、不当、又は違法に干渉したり、私生活上の事実情報、非公知情報、一般人なら公開を望まない情報をみだりに公開したりすること。

2)特に個人情報について、本人の了承を得ずに、取得、保管、公開又は第三者への提供を行うこと。

 消費者の心身の健康を害するような製品・サービスの提供、製品表示等における不当表示や消費者の知る権利を侵害すること。

 人種、民族、性別、言語、宗教、政治的及びその他の意見、国籍又は社会的出自、財産、出生、その他の状態(性的指向や健康状態、障害の有無)を含む、遂行すべき業務と何ら関係のない属性や雇用形態(正規・非正規)を理由に、特定個人を事実上、直接的又は間接的に、従属的又は不利な立場に置くこと。

1)生物学的・社会・文化的な性別役割に基づいて、就職の機会や賃金、労働環境などの待遇において差別又は不当な扱いを受けること。

2)LGBTQAなど、性的指向や性自認におけるマイノリティが、職場での日常的な差別や就職活動等で不利益を被ること。

 外部から干渉されることなく意見を持ち、求め、受け取り、伝える権利を妨げること。

 企業活動により、先住民族や地域住民のあらゆる人権を侵害すること。

 個人や企業等に属する知的財産権(著作権や特許権等)を侵害すること。

 企業が事業を行う中で、不正、違法、又は背任にあたるような行為を引き出す誘因として、いずれかの人物との間で贈与、融資、謝礼、報酬その他の利益を供与又は受領すること、又は受託した権力を個人の利益のために用いること。

 企業のサプライチェーン上で人権侵害が発生すること。

 企業が人権への負の影響を引き起こした際に、被害者が効果的な救済を受けるための適切で実効的なプロセスへのアクセスが確保されないこと。

こうしたことが企業の人権リスクとしてあげられます。そして人権の軽視によってリスクを放置すると、企業にはさらなるリスクが高まってしまいます。

人権リスクがもたらす4つの経営リスク

 「人権リスク」とは、企業活動によって個人や集団の人権が侵害されるリスクのことをさします。企業自体への直接的なリスクと同時に、従業員、取引先、投資家、消費者、地域住民といった「人」に対するリスクのことでもあります。直接的なリスクではないといっても、サステナビリティを考慮した経営が求められる現代において、人権リスクへの不十分な対応は経営リスクに直結します。具体的に4つのリスクについて紹介します。

 人権対応が不十分な企業は、NGOやメディアからの、そしてSNS上での直接的な批判の対象になる可能性があります。日本企業の人権対応は国際的に遅れているとされており、特に注意が必要です。NGOやメディアの中でも、特に社会的信頼の高いアクターから人権対応の不備を名指しで批判された場合、企業のイメージや評価が低下してしまう可能性があります。他にも、ブランド力の低下や、不買運動などによる売上低下などのリスクが生じます。

 人権への対応を軽視したまま事業活動を続けると、いずれオペレーションが適切に機能しなくなるおそれが出てきます。例えば、顧客企業から取引条件として人権尊重への具体的な取組を求められ、対応できなければ自社の製品やサービスを販売できなくなるケースや、NGOの指摘によりサプライチェーン上の人権侵害が発覚した際、迅速に対応できず自社製品の原材料が調達不能となるといったリスクが生じます。また、従業員が人権尊重を求めてストライキを決行したり、退職したりするケースも想定されるため、社外だけでなく社内からの反発を招く可能性も出てきます。

 欧米を中心に、企業の人権対応を法律で義務化する動きが広がっています。国や地域によって規制や罰則の内容はさまざまですが、違反した場合は輸入差止めなどの行政罰や、罰金などの法的処罰が科されるほか、訴訟提起につながる可能性もあります。例えば、2022年2月に発表されたEUのコーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンスに関する指令案 には、「人権や環境への悪影響を予防・是正する義務を果たせなかった特定の企業に対して、売上高に応じた罰金を科す」とあります。今後、EU加盟国ではこの指令案に基づいた法整備が想定されます。アジア諸国の中で法律が整備されている国・地域はまだありませんが、タイ、マレーシア、インドネシアなどでは、ビジネスと人権に関する国別行動計画の策定が進んでいます。世界は企業の人権対応の義務化に向かって進んでおり、取組が不十分な企業はグローバルサプライチェーンから締め出されるおそれもあります。

 日本政府も2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表しており、人権デュー・ディリジェンスの法制化に向けて超党派の議連が立ち上がり提言が出されています。

 投資家による近年のESG投資の急速な高まりを背景に、多くの企業がESGへの対応に迫られています。つまり、投融資において、よりサステナブルなビジネスを対象とする動きが加速しているのです。例えば、責任投資原則(PRI、投資の意思決定を行う際、投資先企業の環境・社会問題・企業統治への取り組みを考慮・反映すべきとする原則)に賛同して署名した機関の数とその運用資産残高は急増しています。PRIは2020年に機関投資家を対象とする人権フレームワークを発表し、ビジネスと人権に関する国際基準に則り、投資活動に人権を組み込むよう投資家に対して期待を表明しました。企業にとって、国際基準に基づく人権の取り組みが投融資の呼び水となる一方で、不十分な取り組みはダイベストメントにつながる可能性が高まっていると言えます。

 他にもインターネット上には企業の不祥事リストがつくられ、企業名や不祥事等に関する情報が掲載されており、それはデジタルタトゥーとして残り続けています。

「ビジネスと人権」とは

 ビジネスと人権とは、あらゆる国家や企業に対し、所在地、所有者、組織構造、組織の規模や業種に関わらず、人権の保護・尊重への取組を促すものです。

 指導原則では、国家の義務だけでなく企業の責任も求めています。途上国でビジネス活動を行う場合、その国の基準を守ればよいとなっていましたが、今では国際基準・人権基準に基づいたビジネスが求められるようになっています。

 2020年には「ビジネスと人権に関する行動計画」が、2022年「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されています。

 指導原則で注目すべきは、企業活動によって影響を受ける、影響を受ける可能性があるすべての人の人権に配慮しなければならないということです。従来、企業の責任の範囲は社員や契約社員、派遣社員が対象であるという認識が多かったわけですが、今では顧客をはじめ、消費者、事業活動が行われる地元住民なども企業が人権を尊重すべき範囲として含まれています。つまり中小企業も、支店や支社も例外ではないということです。

 人権リスクの放置することは、被害を受けている人たちの人生、命、生活を脅かすことになり、責任ある企業とは言えません。

1.指導原則は前述のように事業所や経営の規模の大小を問わず、すべての企業が責任を負うとしています。

2.事業規模が小さな中小企業であっても、人権に対する潜在的・実際的な影響が必ずしも小さいとは言えず、人権に対する企業の責任は変わりません。

3.欧州を中心に人権侵害の是正を企業に義務付ける法律の導入が進んでおり、大企業だけが影響を受けるものではありません。

4.2023年5月、与野党議員でつくる「人権外交を超党派で考える議員連盟」が、今年度内の人権デュー・ディリジェンスの法制化に向けた提言が提出されています。

 実際に導入される場合には、欧米と同じく一定規模以上の企業に対象が限定されることは考えられますが、その効果は、サプライチェーンを通じて、中小企業にも及ぶ可能性が高いとされています。

「人権デュー・ディリジェンス」とは

 サプライチェーンを含めた事業およびビジネス上の関係に対し、人権に関するリスクを特定し、どのリスクに取り組むか優先順位をつける必要があります。特定した人権に関するリスクが自社の各工程において、どのように発生したのか分析し、軽減や是正の取組を行うことが求められます。また、直接の影響を及ぼしていなくても、リスクの防止や軽減の措置が求められます。

 具体的な取組を実施した後は、取組の実効性の評価を行い、その結果に基づいて継続的な改善を進める必要があります。

 人権に関し、どのように対処し、結果がどうなったのか調査結果や成果の情報を外部に公開することも重要です。

「人権デュー・ディリジェンス」6つの柱

 人権侵害や差別の特定、分析(差別性や問題点は何か、問題発生の原因や背景は何か、原因や背景が是正されない課題は何か、どうすれば課題を解決できるか)、評価

①全従業員、階級や勤務年数等の段階別の人権研修の実施

②人権に関する社内啓発・教育活動 等

①人事・評価・働き方など社内制度・慣行の改善

②バリアフリー設備の導入 等

①「サプライヤー行動規範」の策定

②持続可能な責任ある原料の調達 等

①従業員や取引先への定期的な人権意識、被害実態等のアンケート

②従業員の勤務状況、労働時間のモニタリング

③労働組合との意見交換 等

①人権報告書、サステナビリティ報告書の作成・公開

②人権に関するリスクの評価結果に関する情報公開 等

例えば、

1.児童労働や強制労働に加担しているようなことはありませんか?

2.団体交渉権や結社の自由は尊重されていますか?

3.雇用時、採用時、賃金や待遇、労働内において性や人種、心身の状態、出身地等を理由とした差別や人権侵害は起きていませんか?

4 ハラスメントは起きていませんか?

5.安全と健康が担保される労働環境は構築されていますか?

6 適切な賃金が支払われていますか?

7.取引先は問題ありませんか?

等です。

1.企業トップが人権方針や人権DDを承認した上で実施されていること。

2.社内外の法律や人権問題の専門家の情報提供を受けること。

3.従業員、取引関係者、その他企業活動・製品もしくはサービスに直接関係している人々に対し、人権配慮に関する認識と取組が定着することについて期待すること。

4.一般公開され、ステークホルダーに周知されていること。

5.企業全体の事業方針や経営の中枢、各種手続きに反映されていること。

が重要になります。

認識されない人権侵害は解決されない」「知らない人権方針は実践されない」

 ガバナンス(企業の組織ぐるみの不祥事を防ぐために、社外取締役や社外監査役など、社外の管理者によって経営を監視する仕組み)をどのように機能させていくか、内部統制(法令遵守のための社内向けの仕組み)を具体化していけるかが重要になります。これが不十分なことで不祥事が相次いでしまうような結果が生じてきています。

 「本社がやっています」と答えるも、本社が具体的に何をしているのかを認識できていない場合が少なくありません。本社でやっていることは本来なら支社や支店で実施されているものであり、社全体の実践であるはずです。

 本社が取り組んでいる人権デュー・ディリジェンスは「支社や支店では何に、どのように取り組んでいるか」が問われています。

企業の健康診断としての人権デュー・ディリジェンス

 名医と言われる医師が最も重視されているのは「正確な診断」だと言われています。どれだけ手術に長けていても、誤診すれば病気は治せません。患者は痛みなどの不調で病院に来ます。法律面の困り事の場合、弁護士などの法律相談を利用するのと同様です。

 名医はまず問診を行い、痛みや不調の原因を明らかにしていく。どのような痛みか、どの箇所が痛むか、いつからか、どれくらいの間隔かなどを詳細に聞き、痛みの原因を探ります。次に、検査機器を駆使して原因を明らかにしていきます。

 痛みがなくても健康診断が行われています。より精度の高い人間ドックを定期受診する人もいます。これは「健康面の監査」のようなものです。この人の健康を、企業の人権に置き換えれば「人権デュー・ディリジェンス」になります。つまり「人権監査」が必要だと思います。

人権に取り組むメリット

 企業が人権に取り組むことにはメリットがあります。

 既存顧客との関係性が強化されると、顧客が定着するとともに、シェアや宣伝もしてくれるようになります。

 そうすると新規顧客の開拓にもつながっていきます。

 採用力も向上し、働きすく評判の高い企業には人が集まるようになってきますので、採用にかかるコストを削減することができるようになります。

 働きやすさは人材の定着率を向上させ、生産性の向上にもつながっていきます。

 それが株式等の価値を高め、企業イメージ、ブランド価値が向上していきます。

 国の方からは、実際に国内の企業が人権に取り組んだ結果として現れてきた成果をアンケートにまとめられています。

 人権デュー・ディリジェンスは企業だけでなく、政府や地方自治体、各種団体にも必要な取組です。個人的には、今の政府はまさにそのような状況にあると思っています。法令などの基準に反する行為の横行、賄賂等の腐敗、人権軽視の発言の数々、不透明な各種プロセスや市民の知る権利の侵害、パワハラ・セクハラ行為、差別、ジェンダーや性的マイノリティをめぐる各種問題等が、ここ数年だけでも発生し続けています。人権DDの法制化を待つだけでなく、地方自治体による人権DDの条例化、庁内人権ガイドラインや方針を策定していくことができます。県や市職員の人権意識調査では、庁内でのハラスメントが明らかになっています。公金の不正利用や法律違反などの腐敗や賄賂が取り上げられています。そうしたものを防ぐために、方針を策定し、ガバナンスを徹底していくことが必要になります。

統一応募用紙に関する学習は重要。しかし、学ぶべきは労働者としての権利に関しても

 統一応募用紙にかかる学習が中学校や高校を中心に行われています。教科書無償化や統一応募用紙の取組は、「子どもを学校に通わせ、たくさんの友だちと出会い、たくさんの学びを受けさせたい」、「子どもの意欲や能力に応じて、働きたいと思うところで働きたい」という憲法で保障されている当たり前の権利、そして保護者や教職員をはじめ関係者らの願いや思いを実現させるために、何故部落の子どもたちは学校へ通えないのか、何故部落の青年たちは就職差別によって夢や希望を絶たれてしまうのか、そんなことは許されないと、子どもたちや保護者に関わるたくさん人たちが、どれほど努力してきたのか、人々の願いに基づく取組・運動の積み重ねが、教育を受ける権利、働く権利の獲得につながり、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現に大きく貢献してきたこと、人権獲得の歴史は「争議性」をともなうものであり、「仲良しこよし」「思いやりややさしさ」「心がけの問題ではない」ことを理解してほしいと思っています。常に、何をするにもスタートは「一人の声や動き」からです。

 2023年5月に連合が発表した「就職差別に関する調査2023」では、応募書類やエントリーシートで記入を求められたことがあるものとして、

1)「性別」80.5%(前回91.2%)、「本籍地や出生地に関すること」43.6%(前回56.4%)があったこと

2)採用試験の面接で質問されたことがあるもの

①「転勤ができるかどうか」43.3%(前回42.3%)

②「残業や休日出勤ができるかどうか」42.8%(前回34.7%)

「性別」28.6%(前回18.9%)、「本籍地や出生地に関すること」28.3%(前回31.6%)

などが明らかになっており、過去の問題ではありません。企業する若者が増えてきたこと、厚生労働省の取組が脆弱な影響もあって、このような状況となっています。生徒たちが、応募書類やエントリーシートで、本当に「性別」「出生地や本籍地」に関する欄に抗えるのか(大手はオンラインを適用しているところも多く、回答しないと進めないことも報告されています)、性差別や部落差別、外国人差別などにつながりかねない企業側の行為にどう向き合えるのか、とても重い課題です。

 そして、この間、明らかになってきた旧ジャニーズ事務所の所属タレントたちや、宝塚歌劇団の劇団員や音楽学校の生徒、ビッグモーターの社員などのように、明確な人権侵害に対し「辞めるか・従うか」の二択をせまられていました。つまり「労働者の権利・人権」です。子どもたちが学校で学ぶべき内容は、採用前や採用時だけでなく、採用後における労働者の権利とは何かということを学ぶ機会も提供しないといけないことが、この間、明らかになってきた問題でもあると思っています。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

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