ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」3 教科書は何故無償なのか。これからも語り継がれてほしい闘いの歴史、すべての人の幸せを願う思い。

 Facebookでつながっていただいている方々は、4月6日の投稿でご覧いただいたと思うが、ブログでも紹介したい。

 4月6日は、子どもの小学校の入学式だった。コロナ対策の関係で、保護者だけが集められ、座席には、すでに教科書やお祝い品が並べられていました。

 以前から、友人たちの投稿で教科書の裏側に書かれているものを知っていましたが、実際に見るのは多分初めて。文部科学省からのメッセージが書かれていました。

 「保護者の皆様へ」と題し、

 「お子様の御入学おめでとうございます。この教科書は、義務教育の児童・生徒に対し、国が無償で配布しているものです。この教科書の無償給与制度は、憲法に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、次代を担う子供たちに対し、我が国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いを込めて、その負担によって実施されております。一年生として初めて教科書を手にする機会に、この制度に込められた意義と願いをお子様にお伝えになり、教科書を大切に使うよう御指導いただければ幸いです。文部科学省」

とされています。

 しかし、子どもがお世話になる学校は、これだけではありませんでした。何故、文部科学省は、このような内容を記載しているのか、無償化までにどのような出来事があったのか、さらに深く詳しい内容の書かれたプリントが配布されていました。

 非識字者に向けて、ルビがふられています。

 プリントの内容は次の通りです。

「教科書の無償配布、知っていますか?〜教科書無償化の闘いについて〜」

 「教科書の裏表紙を見てください。『この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待を込め、税金によって無償で配布されています。大切に使いましょう』と書かれています。「教科書は配られるもの」「教科書はタダで当たり前」と思っていませんか?教科書はタダではなく、税金によって子どもたちに配られています。現在、義務教育の小・中学校で、すべての子どもたちに無償で配布されていますが、初めからそうだったわけではありません。昔は各家庭でお金を出して教科書を買っていました。この教科書を無償にするために、多くの人々が立ち上がり、さまざまな運動や取り組みの結果、教科書を無償にすることができたのです。

「教科書無償化の闘い」

 教科書無償化の闘いは、戦前からありましたが、無償化を決定づけたのは、1961年から始まった高知市長浜の「教科書無償の闘い」でした。高知市長浜は半農半漁の被差別部落でしたが仕事らしい仕事に恵まれず、母親たちの多くは失業対策事業(失対)に出て働いていました。当日の(失対)は1日働いて約300円。教科書は小学校で当時700円、中学校になると約1200円にもなり、(失対)で働く親たちにとっては、かなりの金額で、子どもの教科書を買うことは、とても大きな負担でした。

 そのころ母親たちは、学校の教師と学習会をもっていました。憲法を学習している際、第26条に「義務教育は、これを無償とする」とあることを学びました。「憲法に書いてある義務教育なのに、教科書が無償でないことは、いかがなものか」ということになりました。

 母親たちは学校の教師をはじめ、地域の人々やいっしょに闘う団体にも働きかけて、「教科書をタダにする会」を結成しました。この会は各地で集会を開き、署名活動を展開するとともに、一緒に闘う団体を増やしていきました。そして、「教科書を無償に」の要求を高知市教育委員会に出しました。高知市議会も小・中学校の教科書を無償にするよう内閣総理大臣や文部大臣あてに意見書を提出しています。

 この憲法の精神にも合致した闘いは、国会でも大きな問題として取り上げられ、1963年に「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が成立しました。その後、少しずつ無償の枠を広げながら、ついに1969年に全国の小・中学校全体が無償となりました。

 このように高知県長浜の人々が始めた運動が全国的に大きなうねりとなり、多くの人々の支持を得て、教科書の無償化を勝ち取りました。「教科書無償化の闘い」は、憲法の精神に照らして、誰もが幸せに暮らせる社会の実現をめざした長浜の人々の熱い想いが結実したものと言えます。普段、何気なく使っている教科書ですが、教科書が無償になるまでに、このような歴史があったことを私たちは忘れてはなりません。

 このように締め括られたプリント、自分が小学校の時もあったといわれていました。母校に子どもを通わせたかった理由の一つに、こうした忘れてはならない出来事を大切に引き継ぐ文化があることです。それは学力・進路保障の営みも、誰もが大切にされる学校・地域づくりもです。

 この内容は、ぜひ各所でお使いください。学校の許可を得ています。

 教科書無償化の闘いがまとめれた書籍がありますので、紹介しておきます。


 ご覧いただき、ありがとうございました。

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