ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」30 情報が社会に甚大な影響を与える〜ヤフコメが放火の動機にも〜

 情報が社会や人々に影響を与えるということが、SNSの登場やネット技術・サービスのますますの進展により、これまで以上に顕著に現れるようになってきています。子どもに限らず、社会人においても情報リテラシーを身につけることはもちろんのこと、事業者が私たちオンラインの恩恵を受ける側に、どのようなサービスを提供してくれること、また私たちがオンラインの恩恵をどのように、あるべき社会の実現のために活用していくかは、人類の大きなテーマになっていると言っても過言ではありません。

 SNSや動画サイトを中心にさまざまな情報戦が繰り広げられ、人々の投票行動に影響を及ぼし、首長を決めることにまで影響を持つようになったのは、最近の話ではありません。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻においても、サイバーでの情報戦が繰り広げられ、アノニマスの登場だけでなく、31歳のウクライナ副首相兼デジタル改革相のフェドロフさんがこの間、果たしている役割はとてつもなく大きいものです。世界を味方につける情報発信・拡散力は数十万人を超える人たちと世界的なネットワークを作り上げたと言われ、今でも賛同者が増えていると言われています。ロシアが流すフェイクニュースを打つ消す手法は、見事なもので、ロシア政府が流すフェイクニュースは、ロシア国内では情報統制により一定の影響を持っていますが、世界に向けては賛同国がせいぜいであり、見事です。それだけでなく世界中に支援の輪を作り出しました。

 これほど影響を持つようになったインターネットにおいて、私たちが知っておきたいことを簡潔ですが、書いていきたいと思います。

まずは、フィルターバブル

 フィルターバブルとは、「インターネットの中で泡のなかに包まれたようなかたちとなり、自分が見たい・自分の考えや価値観に見合う情報しか見えなくなることです。

 Yahoo!やGoogle、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSNSは、過去に特定のサイトをクリックした際の履歴や検索履歴などから、その利用者が興味のある情報をオートマチックに判断し、検索結果やSNS上に表示されるようになっています。

 フィルターバブルによって、見たい情報に触れやすくなるため、自分の価値観や考え方に沿った情報をたくさん蓄積することができるという利点がある一方、フィルターバブルにより、情報が自動的に取捨選択されてしまい、多様な価値観に触れる機会が損なわれ、民主主義が後退し、自分にとって不都合な情報に触れなくなることで、そのような情報に出会うと、深く考えようとすることができなくなり思考停止に陥り、それらの情報を批判的、時には非難的に捉える思考が強く働いてしまい、真実を見誤ってしまうこと、多様性を否定してしまうことが生じてしまうことがあります。こうしたものが人々の分断を生み出してしまうなどの問題も出てきています。

 右寄りの人はより右に、左寄りの人はより左になっていきやすいということです。このフィルターバブルの影響も、差別やヘイトスピーチが登場し、より過激にさせてきた側面があります。

続いて、ホモフィリー

 ホモフィリーとは、同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする人間の傾向のこととされています。私たちは、同じ属性を有する人に親近感を持ちやすく、そうした他者からさまざまな影響を受けやすい性質があります。

 これそのものに問題があるわけではありません。私の経験でいえば、同じマイノリティ性を有している人のすべてを信頼・信用しているわけではないものの、初めていく土地で初めて出会う人でも、同じマイノリティ性を有している人だとわかると、かなり早い段階で距離が縮まることがあります。その人が、職場の関係や運動の関係などにおいて先駆的な立場の人である場合、大きな影響を受けることがあります。児童生徒で言えば、いわゆる「男子生徒同士」「女子生徒同士」がくっつきやすい、同じような境遇の元気な生徒たちが群れやすい、マイノリティ性を有する生徒同士がくっつきやすいなどです。有形無形の安心感を得られやすいということでしょうか。

 これがマイナスに機能した時に、ややこしい問題が生じます。一旦、暴走が始まるとストップをかけられる人がいない、歯止めがかからなくなる場合があるということです。

そして、エコーチェーンバー

 エコーチェーンバーとは「反響室」という意味があり、SNSなどで、価値観の似た人同士が交流し、共感し合うことによって、特定の意見や思想が増幅されて影響力をもつ現象をさすとされています。特定個人やマイノリティに対するヘイトスピーチや誹謗中傷、攻撃的な投稿やフェイクニュースなどが広まる一つの要因とも言われています。

 TwitterやInstagramなどのSNSに投稿した自分の内容に対して、たくさんの「いいね」や「リツイート」がされると、自分の投稿内容が正しいと思ってしまいます。さらに、自分のタイムライン上に流れてくる、たくさんの「いいね」や「リツイート」がついている情報は、「正しいもの」だと思い込んでしまいます。そして、何らかの思い込みがあると、それを立証するための情報ばかりに目が行ってしまい、常に好む価値観や同じ意見を見たり聞いたりすることによって、自分にはない価値観や考えなどに出会うと、思考が停止された状態が作られ、「違う意見や認識は間違っている」と捉えてしまうことが起きてしまいます。

今回の最後は、サイバーカスケード

 サイバーカスケードとは、同じような考えや価値観、思想を持つ人たちがインターネット上で強く結びついた結果、自分たちとは違う価値観や考え、意見のすべてを排除した閉鎖的なコミュニティを形成する現象のこととされています。

 これらの問題が差別や人権侵害などに大きな影響を与えているとされています。京都府宇治市のウトロ地区などを放火した人物は、ヤフコメのコメント内容とヘイトや偏見を助長する投稿への肯定評価が多かったことが事件の動機であると新聞社の取材に答えています。こうした問題は今に始まったことではなく、例外的な問題でもありません。

 差別や人権侵害などを解消するために、私たちはさまざまなメディアとどのように向き合うか、どのようなメディアを構築するべきか、どのようにメディアを活用し差別を解消していくか等、取り組むべきことが山積しています。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

1件のコメント

  1. 知らないことがまだまだあると思いました。やはり、日々学びですね。

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