ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」35 求められる人権施策って何①まずは実態把握でしょ!

 都道府県や市区町村が取り組むべき人権施策とは何なのか、あれこれ考えたり思いついたりしたことを書いてみます。

実態を丁寧に正確に把握せずして何に取り組める?

 まずは、市民の人権意識を把握するためのアンケートを実施し、市民に根ざす差別意識や偏見を洗い出すことが必要になります。

①差別の現状認識

②子どもが結婚をする時、相手がマイノリティだった場合の態度

③家を購入(賃貸)する時、その家が同和地区や外国人集住地域にあった場合や「障害」者の生活支援施設や児童養護施設があった際の態度

④差別や偏見に関する発言を見聞きした経験

⑤縁談の話があった際、身元調査を実施することへの捉え方

⑥感染症をめぐる抵抗感(近所に住む、同じ職場に働く、一緒に入浴をする)

などを明らかにすることが求められます。

 ただし、「人権が尊重されていると思うか」や「どんな取り組みが有効か」など聞いた後に、どんな取り組みを講じるのかが見えない、聞いて終わるような問いは不必要です。研究者に項目から設計してもらうところから調査に関わってもらうことが必要です。

従来の意識調査では不十分です。

 多くの自治体で実施されている意識調査は、あらゆる人権課題を網羅しようとして、各人権課題に関する質問項目が2〜3程度、設計されているものです。なので、各課題について市民意識を正確に測ることはできません。

 だから、部落差別意識は部落問題に特化した意識調査を部落差別解消推進法の分掌を有する部局が実施する、「障害」者差別意識は障害福祉などの部局が「障害」者問題に特化して実施する、在日コリアンや外国人は分掌を有する部局が実施する、性的マイノリティに関して特化した調査を実施するというような取り組みが本来はあるべきです。

次に、被害実態を把握するための調査が必要です。

 部落差別や「障害」者差別、在日コリアンへの差別、ニューカマーへの差別、性的マイノリティへの差別、感染症をめぐる差別について、マイノリティが差別や人権侵害の被害を受けた経験を聞くための調査が必須です。

 被害者に聞いてこそ、差別の全容が明らかになってきます。いつ、どこで、誰から、どのような内容の被害を受け、どのように対処したのかなどにより、相談や救済、教育や啓発、差別の未然防止など、取り組むべき施策が明らかになってきます。この被害実態調査を大半の自治体が取り組んでいません。

 被差別部落出身者を対象とした被差別体験や生活実態調査、在日コリアンを対象とした被差別体験や生活実態調査、「障害」者を対象とした被差別体験や生活実態調査、性的マイノリティを対象とした被差別体験や生活実態調査などが実施される必要があります。

加差別の実態を明らかにするための調査も必要です。

 宅地建物取引についての人権問題の実態を明らかにするために、業者に向けて、同和地区かどうかの問い合わせがあったか否か、同和地区等を理由に物件が忌避されたり、取引が不調になったことがないか、「障害」者や海外にルーツがある、ひとり親家庭である、高齢者である、性的マイノリティであることを理由に、家主が入居を拒否した事例があるかどうかなど、土地や物件をめぐる差別や人権侵害が生じているのかどうかを明らかにするための調査が必要です。

 身元調査等に関しては、弁護士や司法書士、行政書士等の八士業をはじめ、興信所や探偵業者に向けて、差別につながる身元調査の依頼があるのかないのかなども調査で明らかにすることが必要になります。

当然ながら、インターネット上の差別投稿を収集し対処することです。

 このご時世、インターネットを通じて差別や人権侵害などの問題は、都道府県すべてで起きているでしょう。都道府県民や市区町村民で被害者が生み出されている中、自治体が問題があることを認識しながら、何もしないことは条約や法律の責務規定からしてもあり得ません。自治体に関する差別投稿を各種サイトから発見し、削除依頼や通報するような取り組みが求められます。

 勘違いしてはいけないのは、都道府県民から確実に加害者も出ていることです。ただし、これは容易にどこの都道府県民かを判断することはできません。また、都道府県民の人権意識に悪影響を与えるような投稿も溢れています。自治体に関する差別投稿が発見されていなくても、影響を与えるような差別投稿についても積極的に対処することが求められます。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

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