ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」55 求められる人権施策って何④ 教育施策について挙げてみた!

 部落差別解消推進法では、第3条の2項で「地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。」とされ、部落差別解消推進法の第4条の「相談体制の充実」、第5条の「教育及び啓発」、第6条の「実態調査」について取り組むことが明記されています。

 教育は、着実に部落差別を解消する有効なものでなくてはならず、その成果は市民を対象とする意識調査が実施された際に、差別につながる回答がゼロの状態に、そしてマイノリティへのヒアリングや調査を実施した際に、差別被害が生じていない状態に、インターネット上に差別投稿がない状態をめざしていくものです。従来の教育施策や内容で解消されなかった問題が出てきているなかで、差別の解消に有効打となる施策や教育内容が求められます。

 部落差別解消推進法が施行されてから5年が経過したなかで、法律に基づき、横出し・上乗せをした条例が制定され、自治体の部署名も法律名にあわせて、「部落差別解消推進」という法律用語を取り入れた部署が設置され、分掌を従来以上により明確化している自治体も出てきています。

 「部落差別解消推進法」は「教育」を重要な柱の一つとして位置づけました。

 このような状況にあって、差別をなくそうとする教育を推進することに関連して、部落問題をベースにしながら求められることを書いてみました。さまざまな人権問題にも当てはめてみてください。

1 条例制定の制定

 部落差別の解消に向けた条例等を制定し、その中に教育・啓発の課題を明確に位置づけることについて部落差別解消条例を制定している自治体が出てきています。自治体においても条例を制定し、自治体内の全ての教育機関で部落差別を解消するための学習が展開されるしくみをつくる必要があります。

2 計画や方針の策定

 教育委員会として、部落差別をなくすという明確な目標と方針を示すことについて部落差別解消推進法によって、自治体にも部落差別を解消するための責務が課せられています。文部科学省においても「人権教育の指導方法等の在り方について【第三次とりまとめ】」が2008年に発表され、2021年3月にはその「補足資料」がまとめられました。教育委員会として、差別意識や偏見の除去を目指す取り組みだけでなく、生活実態に現れる差別の現実を効果的に解消する教育内容がすべての学校で展開されるよう改正するとともに、「部落差別解消推進に関する教育計画(仮称)」などを策定することが望まれます。

3 教材開発とガイドラインの策定

 教職経験の少ない教員が増える中、教育委員会から学校に対し、具体的でわかりやすい教材の開発が求められます。教材の活用方法を制度化するとともに、経験年数の少ない教員を意識した、ガイドラインなどの策定も求められます。

4 研修会やスキルアップ講座の開催

 初任者研修や10年経験者研修などに部落問題学習を位置づけることが求められます。部落差別解消推進法が制定されたことを受け、一層の研修充実が必要であり、すべてのキャリアステージの教職員研修に部落問題学習を位置づける研修体制が求められます。

5 教職員や生徒、保護者対象の人権意識調査

 教職員・生徒・保護者の学習経験の有無や内容・捉え方、マイノリティとの出会いの有無、差別意識・偏見の状態、人権意識の度合い等について、課題を明らかにし、問題解決に有効な施策を展開するための調査が必要です。思い込みや憶測ではなく、客観的な事実を明らかにするために、まずは正確な現実を把握した上でないと、必要な施策を導き出すことができません。

6 実践研究

 部落問題を取り上げたクラスでの実践をレポートとしてまとめ、さまざまな視点から批判・指摘されるような実践をより向上させるような取り組みが求められます。部落にルーツのある子を視点に置いたクラスづくり、部落を有さない学校における部落問題学習の展開などについて取り組みを進める学校の実践が広がりを見せていくためにも重要な取り組みです。

7 施策推進のための体制づくり

 教育委員会内に人権教育に関する組織を設置し、毎年実態や取り組みについて議論することについて、教育委員会全体を横断的にカバーするプロジェクトを創り、市教育委員会が有機的に部落問題学習など人権教育に取り組みやすくなるような体制づくりが求められます。

8 差別の影響による諸課題を改善・解決する

 部落差別の現実は市民意識や加差別の実態だけでなく、マイノリティの生活実態にも現れています。自治体全体との収入格差や生活保護受給比率の高さは、一朝一夕で解消されるものではなく、息の長い、着実に解消に向けた取組を積み上げていくことが求められます。

 経済的・社会的・文化的な自立を実現するためにも、教育集会所や児童館における問題解決に有効な施策の展開が持続される必要があります。差別の遠因による低学力傾向を克服するための学習支援はもとより、子育てスキルや育児スタイルの確立、子育てをはじめ保護者の生活全般に関わる相談、経済的側面の支援等の取組、不安定な生活や就労状況に関する世代間連鎖を断ち切るための取組などを、より積極的に推進し、部落問題の早期解決をめざすことが学校だけでなく、教育集会所や児童館においても求められます。

 ご覧いただき、ありがとうございました。

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