ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」22 防災・減災の実現に人権保障と差別解消は必要不可欠

 日本国内の地震が各地で相次ぎ、いつ大きな震災が発生するかわからない状況となっています。

 防災・減災の取り組みに「人権」が必要不可欠であることは十分に知られておらず、災害時のマイノリティの避難や避難所生活に関する取り組みも十分ではないと感じています。

 今後の取組として、今から始めていきたい取り組みについて「障害」者の視点から書いてみました。もちろん「障害」者に限定されたものではなく、社会全体に関わって生じる災害などの緊急事態では、平時から不利な状況を強いられているマイノリティに、さらなる不利が襲いかかるため、そうした視点でご覧いただければと思います。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災を受け、仕事で県内の各「障害」者団体の協力のもと「災害に関する研究会」を発足しました。さまざまな調査・研究を重ねていくなかで、災害時における「障害」しゃへの合理的配慮が確立されるためには、地域社会との関係性を豊かに築いていくことが重要であることが強調されるようになりました。近隣の人たちが互いに支え合い、ともに避難する体制、ともに避難生活を送る体制や関係を構築するために、研究会ではどの具体化に向けた取組について検討を進めることになりました。

 しかし、研究会メンバーの各「障害」者団体からは、まるで諦めのような声がたくさん上がり、時に「簡単に言ってくれるな」と言う声も出てきました。地域社会との豊かな関係をつくれていれば、自分や我が子は施設や支援学校に行かなくてよいということです。具体的に教えていただくと、差別事象として取り上げられていない深刻な被差別の現実が見えてきました。聞かせていただいた深刻な被害は、一体どれほどの「障害」当事者が体験させられているのだろうか、その被差別体験にどのように対応しているのだろうか、研究会の性質からも防災や減災を実現するために、差別の克服が極めて重要な課題であることが見えてきました。

 そこで、各団体はもとより、県内特別支援学校の保護者も対象とした被差別体験に関するアンケートを2013年度に実施しました。団体や学校、保護者さんたちのご協力をいただいた結果、969票もの有効票が集まりました。

 集計に取りかかる前に、ざっとですが、どのような回答傾向にあるのかを見る癖があります。そこで衝撃を受けました。被差別体験は自由記述方式にしたところ、枠内にとどまらず、調査票の余白という余白にまで体験談や思いが綴られていました。このような回答を見たのは、これまで一度もありません。それが何枚も出てきました。

 驚きはそれだけでなく、969票のうち、800票以上に被差別体験や嫌な思いをした体験が綴られていました。

 まず、嫌な思い・つらい思いをした場所を聞いてみました。

 たくさんの保護者さんの回答であった影響もあり、「普通学校」での体験が40%以上、商業施設や近所、日常生活が3割を超えていました。電車やバスの中も3割近く、中には役所や障害者施設で差別を受けたという回答もありました。

 下記に紹介するのは、800を超える事例の一部の記述内容です。

・兄弟の学校にお迎えに行った時、障がいをもつ兄を見て、学校の生徒に笑われました。車の中で待ってても覗きこんで見てきたりして。もう二度と行きたくないと思いました。このことについて主人に話したところ、学校で役員をした時、夫は直接校長先生に話しました。

・人の目はあまり気にならなくなりました。病院などでは小さな子どもが「へんな子おるよ!」とか「死んどるの?」とか色々言われました。子どもにとっては不思議なのか分かりませんが悲しかったです。

・車椅子だと入りにくい店だと、人の少ない時しか入れないのですが、それでも「狭いのに」という目で見られている時は悲しくなります。バスは時刻が決まっているので、リフトで乗せてもらうと時間がかかって申し訳なくなります。電車へ乗りつぐ方のイライラが顔に出ている時は乗るのをやめたくなります

・「こんな子を連れてよく出かけるなぁ」「一昔前なら離れにオリを作って日中は閉じ込めておいた子だ」「何でこんな子が生まれてしまったのか」など身内から言われた。

・障がいのある子を育てていることを知りながら、職場ではお客様の中に知的障がい者を見つけると「気持ち悪い」「障がい者なんて来店して欲しくない」等の言葉や笑い。

・役所では、小学校の頃、学童保育を「こういう子を一人預かるのにどれだけの経費がかかると思うの?」と断られた。小学校の頃、障がい者利用施設で多動を理由に「他の健常者の親が嫌がっている」と利用を断られた。

・奇声を夜中に発していたため、当時住んでいたアパートの住民の方から「夜中におもちゃで遊ばせるな!うるさい!出て行け!」と言われた。

・学校では、担任から「とても大変な子」「教師をしてきて、このような生徒は初めてだ」と言われたこと。陰では「育て方が悪い。やっかいもの親子」とも言われた。

 次に、このような体験は何時ごろだったのかを聞きました。

 結果は、過去5年以内が70%を超えていました。この大半が自治体などの相談につながっていない状況でした。

 差別を受けた人たちがどのような思いにさせられたのかを複数回答以外にも記述で回答いただきました。

・死にたいと思った

・こんなところにいたくないと思った。

・やる気が起きなくなった。

・穴があったら入りたいような消えてしまいたい気持ちになりました。

・声に出して言うか言わないかは別として、そのように感じている人が多いのだなと真実を知った気がした。

・世間ってそんなもんだとあきらめた。

・障害をもっているから仕方がない。病気みたいにいつか治るわけでもないので、なるべく本人が楽しい一生を送れたならいいかなと思います。

・将来が不安になった。

 こうした被差別体験にどのように対応したかについては、「誰にも相談できなかった」人が約3割、外出自体をしにくくなったが16%、相手に抗議できた人は14%でした。複数回答の中に「その他」の選択肢と記述を入れたところ、次のような回答が綴られていました。

・鬱病になった。対人恐怖症になった

・一人で泣く

・もう慣れている。いちいち考えないことにしている

・小さい時からなので、そういう目に慣れてしまった

・仕方ないとあきらめた

・相談する人がいない。相談しても同じ。言っても同じこと

・(障害のある)本人を連れて行くのをためらう

・引っ越ししました

・保育園をやめた

など、深刻な被害が綴られていました。

 このような差別と、それともなうが日常にあり、いずれも解消されていない中で、いざという時に避難を支援する、避難所生活をともに送るなど、実現できるはずがありません。マジョリティ側からのアプローチが必要不可欠です。

 今回の内容の詳細は職場の研究紀要に掲載していますので、そちらを参考にしてください。

 また、このような本もありますので紹介します。


 ご覧いただき、ありがとうございました。

2件のコメント

  1. 私は中学校にて特別支援学級の担任をしています。自分が子どもたちにしなければらないこと、まだまだ足りていないと思いました。自分はどこに立っているのか、いつも振り返らないといけないですね。

    1. ありがとうございます。支援学校に在籍していない側も、考え、行動していかなければならないことばかりです。

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