ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」108 続「三重県を『正常化』するための闘い」~公職者による排外主義と闘う〜今こそ「反差別・人権尊重」を掲げる時〜

 2026年2月6日に、三重県において現在も、三重県職員の採用に関し、国籍要件を「復活」させようと検討している問題について書きました。(こちらです)続編のこの原稿を書いている5月末も、2025年12月25日からはじまった問題は続いています。2026年5月27日時点までのことをまとめました。

 ここで使用しているイラストは、GoogleのGeminiで生成したものです。

すでに情報漏洩は起きていた!

 2025年12月25日の知事定例会見の前日に、この件は一部のマスメディアが報じました。よくある「スクープ」ですが、このことを知る県庁内部の職員による「情報漏洩」でもあることを、毎日新聞が2026年5月25日に「スクープと情報漏えい」として報じています。会見の前日にすでに「情報漏洩」は起きていたようであり、現在の県庁職員の配置状況からして、99%「日本国籍職員」による「スクープ兼情報漏えい」です。

 改めて。現在、国籍要件を撤廃しているのは、一部職種限定のところも含めて12の府県で、三重県もその一つです。三重県は、多様な人材の採用などを目的に1999年度に一部の職種を除いて県職員の国籍に関する要件を撤廃しました。現在では49職種のうち、獣医師、航海士、機関士、児童福祉司、建築の5職種を除いた、44職種で国籍要件が撤廃されています。

事実ベースでみていくと、

①「国籍」という属性を理由(条件)に、「外国籍者は情報漏洩のリスクがある」という想定で検討が進められています。

②1999年から外国籍者を採用して以降、一度も情報漏洩事案は発生していません。

③日本国籍職員による情報漏洩は、これまで発生しています。

④地方自治法10条1項は「住所を有する者」を住民と定義しており、外国籍住民も原則として「住民(県民)と位置づけられています。

⑤「みえ県民一万人アンケート」は外国籍住民も対象としている施策の評価を行うものですが、アンケートの対象者の選定に選挙人名簿が使用されており、評価の段階では日本国籍住民に限定し、約20年間実施されています。

「県民」をはじき続ける三重県実施のアンケート

 アンケートの項目や補足資料、対象者の選定等に対し、差別であり、自分は被害を受けたという県内在住の在日朝鮮人3世の男性(Aさん)が被害の声をあげはじめられました。2026年3月に三重県へ「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例(以下「人権条例」という。)」に基づき、県への「相談」として、差別の被害や思いなどについて担当課に伝えられました。アンケートの対象者から排除されたことは県政への参画から不当に排除されていること、アンケート項目がまるで外国籍者は犯罪予備軍であるという扱いを受けていること、公表されることで差別やヘイトスピーチが発生することから非公表にすることなどです。相談をされた後、三重県の動向を見ていましたが、知事の会見でも求めたことが何も変わっていないことから、Aさんは、人権条例に基づく「申し立て」を4月8日に知事に行いました。

 Aさんは、地方自治体が差別を認めれば企業にも広がりかねないこと、能力や希望があっても、外国籍という属性だけで排除される社会になるのではないかと懸念されており、私も同感です。民間のモデルとなるべき、法令で差別や人権問題解決の責務を有する地方自治体が、可能性だけをもって国籍を理由に外国籍者を排除してもよい、採用しなくてよいと公言しているのであって、問題にならないわけがない。県は申し立てを受理し、5月7日に人権条例に基づく「差別調整委員会」が開催されており、次回は6月に開催されるようです。この調整委員会は、2年前に開催され、知事が教職員に対して「説示」を出しています。人権条例の立てつけでは、「知事が助言やあっせん、説示、勧告」を行うとされているので、本件が調整委員会で「差別や差別を助長する行為」として認定されるなど、「助言」等が妥当という判断がなされれば、「知事」が「知事」に「助言」等を行うという構図になります。イラストにするとこんな感じです。

撤廃したのに門戸を閉ざそうとするから問題なのに、それがわからない?

 知事は、会見でよく「35」という数字を出します。これは、現在も国籍要件を撤廃していない都道府県数です。知事は、三重県を35の多数の側へ合わすので問題はないと認識されていますが、決定的に何が違うか。それは、国籍要件を撤廃したにも関わらず、復活させることを検討しており、その検討の理由は、「国籍」を理由に、「外国籍の人は情報漏洩の可能性がある」という「事実に基づかない憶測」によるものだから問題になっています。

 「情報漏洩対策」は極めて重要であり、まったく異論はありません。しかし、その対策に関して、そもそも「漏洩」問題と「国籍」とは何ら関係がないことを知事自らが会見で述べています。何度か例にあげられる池袋パスポートセンターに勤務していた派遣社員による情報漏洩事案について触れた際、記者からの質問に「国籍は関係なく情報漏洩は起きる」という旨を発言しています。にも関わらず、「国籍」を理由に採用を見合わせるような検討をしているわけです。「情報漏洩をする人について国籍は関係ない」という知事と、「国籍を理由に情報漏洩対策として外国籍者を採用しないことを検討している」という知事による「またさき」状態に、知事自らが陥っています。この「またさき」は、知事がよく会見で「地方公務員法の守秘義務と外国の法律の間で外国籍者がまたさきに遭うことの人権問題を考えないといけない的なことを言っています。自ら率先してやりはじめたこと、言いはじめたことなので、またさきになっても撤回できず(?)、今日に至っているのかもしれません。国籍という社会的登録で、Aという人物が情報漏洩をはじめ犯罪行為などにおよぶかどうかなど、判断できるはずがありません。そのことは知事も認識されているようです。

子どもたちが「仲間はずし」だと言った

 「みえ県民一万人アンケート」は、約20年前から実施されはじめ、知事が変わる度に名称を変えながら今日に至っています。はじめた当時は、住民基本台帳に外国籍者は含まれていませんでしたので、対象は選挙人名簿から抽出されていました。しかし、住民基本台帳に外国籍者が位置づけられた後も、三重県では選挙人名簿からの抽出を続けています。

 こうした中、今回のアンケートの目的は、これまでの項目にない異質な質問が入りました。それが問16です。このアンケートは、「県政の推進には、広く県民の皆さんのご意見をお聴きすることが重要です。本調査は、アンケートという形で間接的ではあるものの、県民の声をお聴きする貴重な機会であり、令和4(2022)年度に策定した「強じんな美し国ビジョンみえ」や「みえ元気プラン」の内容をふまえ、県民の皆さんの「生活の満足度」などを把握し、県政運営の推進に活用していきます。」とされています。「など」とありますが、過去の問いを見ても、基本は「生活の満足度」をはかるためのアンケートですが。今回の問16は、まったく関係のないものが位置づけられました。しかも、18歳以上の日本国籍を持つ県民だけを対象に、外国籍住民の権利についての問いを設け、実施したわけです。地方自治法では、「外国籍者」も「県民」であるとされています。また、「地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利」があるともされています。本件は、地方自治法に反しており、権利すらも侵害している問題です。

 この問題が報じられた後、県内の小学校や中学校に依頼され、ゲストティーチャーとして授業をした際、児童生徒から「三重県知事のことがニュースになっていますが、あれは何ですか」と質問を受けました。主観は入れず、事実ベースで説明すると、共通して「それは仲間はずしや」と言いました。

同数のものの片方をもって「一般的」と主張する三重県

 私は、この内容を含め、三重県がホームページで行っている「さわやか意見箱」に投函し続けています。内容は、以下です。

 この質問に対する三重県の回答です。

 いろいろと反論してきているのですが、ここで県の回答にある「外国籍住民が対象外となったことは、全国でも一般的な標本抽出元である選挙人名簿の性質に由来する結果」という内容について、5月7日に住民監査請求の陳述の機会があったので行った際、驚きの事実がわかりました。請求人や代理人からの陳述後、監査委員が三重県側に陳述を求めた際、県側は、同様のことを述べたので、請求人の代理人が「一般的と言われましたが割合はどれくらいでしょうか」と聞くと、「47都道府県中、同様規模のアンケート等で、選挙人名簿を使用している自治体が『19』、住民基本台帳を使用している自治体が『19』です」という発言がありました。同数なのに一方をもって「一般的」と地方自治体が発した瞬間、「嘘やろ」でした。三重県は、同数のものの片方をもって、「一般的」と公的な場で発言したのには、まいりました。公的な場で地方自治体が堂々と恣意的な発言をできてしまうところまで「きている」のかと思ってしまいました。「質...能力...」。

人事委員会の適切な判断と、不適切な判断をする知事と県

 5月8日、三重県人事委員会は、2026年度の大卒者ら対象の春試験(A、B試験)の募集要項を発表しました。内容は、従来通り、外国籍者の受験も可能となっています。この人事委員会の発表を受け、各誌が今年度の国籍要件の復活は見送りと報じました。5月9日に知事の定例記者会見があり、知事は「要綱に採用取りやめを検討中と書き込むことが『誠実』」と述べました。また、5月13日には、総務部が記者会見を開き、報道された内容に関して、一部否定をしました。

 それは何か。まず、人事委員会は募集に関する役割を組織であり、実際の採用と配属は三重県が行うものだと説明しました。次に、人事委員会が三重県からの要望的なものを受け入れなかった、はねのけたという扱い(正確には「決まっていないものを入れることはできない」とのことです)になったため、募集要項は従前通りの内容となりましたが、今後、高校卒業者等を対象とする秋に実施される試験(C試験)や、次年度以降の試験については、引き続き、国籍要件の復活についての検討を進めるとのことでした。これも問題ですが、最悪だったのは、今年の春試験で外国籍者が採用されることになれば、採用後に業務の制限を拡大するなどの対応や内定取り消しを含め、検討すると言い放ちました。これは人権宣言や人権条例制定を全国的に見ても早くから取り組んできている「三重県」の話です。

 労働基準法の第3条(均等待遇)では、使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」とされています。よって、国籍による差別を禁じた労働基準法に、直球ど真ん中ストレートで違反している可能性があります。法令に反する可能性のあることが、民間ではなく公から次々と出てきます。

 今回の「知事の憶測」に基づく検討は、ここまで紹介してきたように、法令上、さまざまな問題があるということです。ここまで紹介してきたもの以外にも、憲法第22条の「職業選択の自由」において「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」とあり、この自由権の侵害にあたる可能性があるという指摘もあり、私も同じように捉えています。

知事(権力者)や県(公権力)がもたらす差別やヘイト煽動

 今回の検討は、外国籍者を排除する理由としては、ようは「外国籍者は潜在的なスパイ行為におよぶ」という見方によるものです。意図はどうであれ、結果がまさにそうなっています。これは、差別を煽動する効果をもたらします。知事がこの件を会見で表明して以降、ネットニュースのコメント欄には、すさまじい差別やヘイトスピーチが投稿されています。この件が報じられる度に、ヤフコメやX、掲示版の投稿をチェックし続けています。

 民間人・団体が同様の表明をしても、こうはなりません。「知事」という三重県政における「最高権力者」による表明であること、「三重県」という「公権力」による検討であることが招く結果です。潜在的に差別意識や排外的な意識をもっている人は一定数いますが、そう容易く表に出てくるものではありません。しかし、権力者や公権力が「外国人はいらない・危ない・スパイをしかねないと考えている・言っている」という受け止めになると、潜在化していたものが浮上し、表出をしてくるわけです。

 ここまで日本経済が厳しくなり、市民の生活が圧迫され、展望をもてない上に次々と問題が出てくる社会のあり様は、不平・不満を募らせ、それが増大し、溢れそうになるなかで、はけ口を求める。そのはけ口を今日は「外国籍者」に設定し、はけ口の機会や手段を「選挙」と「SNS」に求めているわけです。後は、権力を有する「強い側・多数の側」についておくことで、自身が「弱い立場・何らかのマイノリティ」であることを認められない・受け入れられない・そう見られたくないという心理による「(自称)強者・マジョリティ」であろうとする態度の現れである側面もあったりします。

おわりに

 県民アンケートの結果とあわせて国籍要件の復活の是非を決め、公表すると知事は会見で述べ、最近では、あのレベルの項目のアンケートを分析すること、統計学の視点から分析してもらうとも述べています。あの項目からどんな分析ができるのかを考えると、高確率で「知事の主観」により行われることになるでしょう。

 これまで20年以上にわたり、多くの職員の方と出会ってきました。もちろん、「ん?」と思う方もいましたが、私は、「知事は別」として、三重県職員の良識な判断を信じています。これは、三重県を「正常化」するための闘いです。なので闘い続けます。


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