ヒューマンライツ情報ブログ「Mの部屋」109 公人による県民(被害者)への度重なる「暴力」 三重県知事に「不当な差別」と至極当然の認定~法令をないがしろにした行政の長~

 2026年8月3日、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例(以下「人権条例」という。)」という「法令」により設置された、三重県知事の諮問機関である「差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)」は、知事の諮問を受け、審議を三回重ねた結果、「答申」を出しました。その答申で「行政の長が『不当な差別』におよんだ」と認定されるという、前代未聞の事態となっています。
 答申は、申立人の意を汲んだだけでなく、公平性・専門性が担保された極めて真っ当なものです。まずは、その概要を紹介します。

Ⅰ「答申」の概要
【1】「過度な一般化」を認定
 「みえ県民一万人アンケート(以下「アンケート」という。)」の設問16は、自国の情報活動への協力を法律で義務付ける国の存在を理由に挙げ、外国籍職員の採用継続の是非を問うているため、回答者は「公務員の守秘義務違反を起こす主体は外国籍職員である」と認識する構造になっていること、本設問は限定的な理由のみで「外国籍職員は守秘義務違反を起こす懸念がある」と回答者に認識させる誘導を行っており、「特定の懸念を過度に一般化している」と認定しました。差「相手がいる」なかで、「自分のみで、誰かを差別したかどうかを判断することはできない」のは差別問題の基礎基本です。属性によって、守秘義務違反や情報漏洩等の可能性を判断できるものではないという、至極当然の指摘です。

【2】「不当な区別」を認定
 「不当な区別」の判断基準として、国籍を理由とする区別の正当性は、代替手段がなく必要最小限度であるかという基準で判断されるべきですが、今回の資料からはそれが読み取れないということです。人権条例第2条2項では、人種等の属性を理由に権利利益の享受・行使を妨げる目的や効果を持つ不当な区別・排除・制限を「不当な差別」と規定しています。憲法第14条では、法の下の平等を定めており、最高裁は基本的人権の保障が外国人にも等しく及ぶと判断しています。アンケートや問16の補足資料は、限定的な懸念を過度に一般化しており、必要最小限度性も読み取れません。そのため、憲法の平等の理念に抵触するおそれがあり、人権条例が禁じる国籍を理由とした「不当な区別」に該当するとしています。

【3】「項目の不適切性」を認定
 補足資料に国籍要件撤廃の経緯や外国籍職員のメリットが書かれておらず、公正な判断材料(両論併記)になっていないため、情報に明確な偏りがあるとされました。また、アンケートの他の設問に比べて文章が著しく長く、偏った補足資料もあるため、県民が容易に回答できない状況となっています。その上、問16と補足資料の内容が、「外国籍者は情報漏洩リスクがある」という偏見を読者に与える恐れがあると認定されました。

【4】「申立人(被害者)の権利侵害」を認定
 県が「外国籍職員は情報漏洩のリスクがある」と誤解されかねない文面でアンケートを行ったことは、あらゆる分野で人権を尊重すべきとする人権条例第5条の県の責務に反していること、県民に外国籍職員への強い偏見を植え付け、外国籍住民の名誉感情を傷つける可能性が十分にあると認定されました。知事の表明とアンケートが公表されたことで、インターネット上で差別やヘイトスピーチ、排外主義に関する投稿が急増し、外国籍住民が日常生活の中で「周りの人も本当はそのように思っているかもしれない」と強い不安感を抱かざるを得なくなる確率は高いとした上で実際に、申立人等から名誉感情が傷つけられたり、日常生活に強い不安感を抱かざるを得ないと申立てがあったことを重く受け止める必要があるとしました。

【5】「不当な差別」と認定
 外国人の採用についてアンケートを実施することが、直ちに不当な差別にあたるということではありませんが、今回、問16の文面によりアンケートを実施したことは、これまで通り、不当な区別にあたり、権利利益の認識、享有、行使が害される効果を有するものであると判断され、人権条例第2条2項に定義する「不当な差別」に該当すると認定しました。

 調整委員会の結論としては、アンケートの問16は「不当な差別」と認識されかねず、限定的な懸念を過度に一般化して外国人の公務員任用を一律に制限すべきかのような不適切な文面であるとし、これにより得られた結果は使用できず、公表すれば新たな差別を助長する恐れがあることから、問16の設問文と回答結果を非公表とすべきであるという助言を行うことが適当だと結論付けました。
 知事や県が「不当な差別をした」と諮問機関に認定されたことは、県政史上はじめてのことです。県職員が差別発言をし、問題視された例はこれまでありますが、「知事」が諮問機関から認定されたのは前代未聞です。知事は明確に「不当な差別をした」と認定されました。

Ⅱ 答申を全否定した、知事による知事に優位な「助言」
 この答申が出されてから、4日後の8月7日、知事は記者会見を開き、調整委員会からの答申を全否定する「助言」を出しました。
 知事の助言は、知事が行いました。強い自己愛の持ち主であるため、当然「自己保身『助言』」を出すことは「決まっていた」と言えます。自分に厳しい、そこまで言わなくても、自分に指を向けられるのであれば、とうの昔に撤回しているでしょう。部長らの反対、副知事の反対を押し切って検討をはじめ、押し通してきた知事が、諮問機関の決定を無視することは、十分予想していましたが、ここまで予想通りだったことには、驚きました。助言の内容と問題点を端的にまとめると、
①知事は、年末に表明して以降、会見や議会で述べてきたことから「何も」変えていません。一環して、同じことを主張し、「助言」という一つの結論についても「結論ありき」だったということです。
②知事の考えてきたことを強化するため、知事の「言うことを聞く」弁護士に、知事自身の考えが正当であるということを「意見書」として出させ、調整委員会の答申は一切無視をしましたが、2人のお抱え弁護士の「意見書」はフルに採用するという暴挙に出ました。ちなみに、弁護士の一人は、知事の検討の内容等に「反対」していました。
③申立人に生じた差別や権利侵害などの複合的な被害を、完全否定・無視しました。
④客観的・専門的に見て、アンケートは不公正であると認定されたことを全否定し、「公平そのものだ」と主張しました。「私がつくったものだから、公平に決まっている」など、あり得ない結論です。でも「私だけ」だと不都合なので、これも知事の言う事を聞く「どこの誰なのか」「本当に世に存在しているのかも不明」な「有識者っぽい人」の意見を採用してきました。開示請求でも「どこの誰か」が公表されない、存在すら不明の人物の意見を採用しています。
⑤アンケートは非公表とすべきとの認定を否定し、「不当な差別にあたらない。よって公表する」としました。
⑥「私に差別する意図はない。だから差別は起きていない」という、差別問題の基本の基もわかっていないことまで助言に書かれています。
 こうした内容の「助言」が出されました。何のどこが、どう「助言」なのか、意味不明です。どこかで、このような行政の長を見聞きしたことはないでしょうか。兵庫県知事と「瓜二つ」です。
 知事が諮問機関に諮問をするということは、諮問機関の決定に従うのが基本です。しかし、知事や県は、「まさかの」「人権条例の条文に、必ず従わなければならないとは規定されていない」と述べ、答申を否定する「助言」を出しています。法令で定めてられていないことなら、何をしてもよいと行政の長が言い放ちました。8月7日の会見では、「人権条例は議会がつくったもの」と言ってのけました。地方自治、二元代表制を否定するしぐさが、兵庫県知事と瓜二つです。

 20年以上、今の仕事をしてきて、県職員の方々の中でも親しい関係となった人たちが複数います。一緒にお酒を呑んだことのある職員さんもです。そんな人たちがそろって、知事のことを語る時、いい話は出てきません。
①県庁の不在率歴代第1位(しょっちゅう東京に行っているようです)
②仕事ができずレクに時間をとられる第1位
③自己中率第1位
④職員の話を聞かない第1位
⑤自分が正しいと過度な思い込みの持ちよう第1位

⑥「パワハラ気質」第1位

⑦「人を不愉快にさせること」第1位

のようです。私が言っているのではありません。2026年6月の県議会を見た際、「若い・女性・特定政党」をいう属性を有する議員とのやりとりで、そのハラスメント気質の一端を見たように思います。

Ⅲ 知事が諮問機関を否定し、存在を無効化したことの意味
 国籍要件に関しては、「さまざまな考え方」があることは承知しています。私は、明確な国籍に基づく不当な差別であること、今回のプロセスそのものを問題視していること、先人たちの不断の努力をないがしろにしてはならないこと、国際社会からの求めを軽視・無視していること、被害をないがしろにしていることなどについて徹底的に抗いますが、事の本質はもっと前段階にあることを、特に、三重県議会や知事を推した団体は理解する必要があります。
「知事が諮問機関の決定を全否定・無視・軽視した」ということは、
①今後、条例は知事により恣意的に運用され、知事にとって不都合なものは、知事の自己保身のために歪められる
②知事の諮問機関(第三者委員会)の決定をここまでないがしろにし、恣意的な運用をするということは、今後、どんな第三者委員会が立ち上がろうと、知事に不都合であれば「結論ありき」「自己保身のために歪められる」ということが証明された
③理事者側の問題が見つかり、議会から第三者委員会の発足を提案したことで、委員会が立ち上がったとしても、それは知事のパフォーマンスに過ぎず、都合のよい部分のみを採用し、不都合な部分は無視や軽視するということを表明した
ということです。

 知事を推した団体は、こうした暴挙を許すのかが問われているということです。正常に機能する県議会なら、不信任が出されるレベル、百条委員会が立ち上がるレベルです。本来であれば、県議会が、知事を推したあらゆる団体が、県外から三重に抗議等をしてくれている団体や個人以上に取り組むべきことです。「黙っている」こと、組織的な動きをとらないことは「加担」「容認」以外に形容できる言葉が見つかりません。
 特に、三重県議会は、行政が正しく行われているかチェックする「意思決定・監視機関」であることから、今回の法令の軽視に、その機能を果たせるのかが問われています。何もしないのであれば、それは議会としての機能が失われているということです。
 国籍要件は極めて重要ですが、議会が問題にしなければならないのは、行政の長が、法令をないがしろにしている、歪めている、恣意的に運用をしているということに対してです。職員が法令を軽視して仕事をさせられています。諮問機関の決定に真っ向対立するような助言を作成させられています。

Ⅳ 問題点の整理
 前述してきたことと重複する内容がありますが、今回の問題点を整理しました。
①人権条例(法令)の無効化と県政の信頼の失墜
 三重県では2022年5月に人権条例が施行されており、調整委員会はその条例に基づいて設置された専門家(大学教授や弁護士ら)による、知事の諮問機関です。県が施行した条例を知事自らが無視・軽視するようなことになれば、「行政の長自らルールを破る」ことになり、県政の法治主義や信頼性が根本から揺らぐこととなります。また県民に対して「条例は守らなくてよい」とのメッセージにもなりかねず、法令を遵守しなければならない行政、行政の長が率先して法令に違反するようなことを行うこと、法令を無効化するようなことを行ってはなりませんが、現知事は、やってはならないことを自己保身のために行いました。人権条例を否定したのはもちろんですが、自身に不都合であれば、「法令」を否定し、軽視するということです。このようなことを県議会は許すのかが問われています。

②「自らが自らに助言する」仕組みの機能不全
 人権条例では、答申を受けた知事が差別の行為者に対して「助言、あっせん、説示」を行うと規定されています。今回は知事の意向で実施されたアンケートが対象であるため、「知事が知事に助言する」という極めて異例な構図になっています。ここで知事が答申を否定する「助言」を出したことにより、身内への甘さを露呈し、チェック機能を自ら麻痺させる状況を招いています。
 人権条例の制定過程や運用については、人権条例策定のための特別委員会が立ち上がった中で、最初の参考人として招致されたこともあり、詳細を知っています。県庁内の特定部署が不当な差別をする可能性を含んで条文は構成されてきましたが、知事が「不当な差別の対象になること」は想定されていませんでした。それは議会のみならず、県職員もはっきりと述べています。つまり、そういうことを今回、知事はやったわけですが、その重大性を知事は認識できておらず、議会の一部も理解されていないようです。

③申立人の被害を軽視した上、否定
 私が最も問題視していることは、今回の助言は、「申立人は差別を受けたと主張しているが、それは申立人の勘違いだ」という結論を出したことです。知事が発生させた明確で深刻な被害を、「意図はなかった」とした上であれこれ御託を並べ、一方的に否定したことは極めて重大な問題であり、これは明確な公権力による「暴力」です。公人が一県民に暴力をふるいました。

④知事がチェリーピッキング
 知事は会見で、条例に基づき助言を出したと主張していたが、助言等を出すことのみを求めているわけではなく、第三者委員会である諮問機関の答申を尊重することを基本としている点で、条例の性質すら理解できていません。調整委員会は、「不当な差別にあたる」ことから、知事に「助言」を答申しており、「助言」をすることを求めていますが、それは「不当な差別である」ことがセットです。しかしながら、知事は「助言すること」のみを「チェリーピッキング」しました。
 今回、知事が行ったことは、知事の意に反する答申を出しても、知事の条例への理解不足、恣意的で公平性に欠ける運用などにより、「無視される」ということであり、今後の人選が知事寄りになる可能性、答申の内容が知事に忖度するような内容になることを明らかにしました。

⑤恣意的な運用を決定づける、条例初の答申と説示の運用と今回の決定的な違い
 条例施行後、初の調整委員会から出された答申は、県内の教育公務員による部落差別に基づく土地差別事案であり、当該教育公務員に対し、調整委員会は「説示」妥当と答申しました。答申を受けた知事は、答申を今回のように「お抱え弁護士である有識者」の意見を聴取するようなことなく、ほぼそのまま「説示」としました。今回の事案は、助言の対象が知事であったことから、「お抱え弁護士である有識者」に意見を求めたことであり、初の答申の取り扱いと明らかに違い、答申を尊重せず、公平性に欠けた恣意的な運用となっています。

⑥特定の有識者の意見のみを採用し、諮問機関の答申を「さまざまな意見」とした
 知事の諮問機関である調整委員会の答申から「不当な差別」とされましたが、知事は「さまざまな意見がある」とし、知事が個別に聞いた「有識者」なる人物から「不当な差別にあたらない」等との知事の意向にそった意見のみを採用し、「不当な差別にあたらない」と決定したプロセスは極めて恣意的で、公平性に欠けるものです。兵庫県知事が百条委員会や第三者委員会の結論等を「さまざまな意見」とし、結果として否定したことと同様のことをやっています。知事の諮問機関の答申を全否定した今回の知事の姿勢は、「法令に準じる必要はない」とのメッセージを県民に、社会に発信しました。
 今回の助言は、知事の結論ありきの内容であり、その主張を「お抱え有識者」なる弁護士にお墨付きを与えさせ、決定に踏み切りました。これは、諮問機関の存在を否定・軽視することであり、調整委員会の開催や審議は、知事にとってパフォーマンスに過ぎないということです。私の認識では、知事は議会に対しても、同じスタンスでいると確信しています。そのことにすべての県議会議員は気づくことです。知事がやろうとしていることを全面的に応援している議員もいるようですが、軽視されていることに気づくべきです。

⑦三重県人権施策審議会を完全無視
 人権条例では、調整委員会以外に、三重県人権施策審議会(以下「審議会」という。)という機関もあり、旧条例の時から設置された知事の諮問機関です。しかしながら、知事や県は、年末から一度たりとも意見聴取すらしておらず、知事の「御用有識者」にのみ意見を聞き、それを助言に全面採用するという暴挙に出ました。三重県人権施策審議会の存在もないがしろにされています。

⑧調整委員会の分掌を有しない「総務部」が助言に関与するというあり得ない事態
 8月7日の会見で記者からの質問に対し、知事は「総務部も関係している」と述べました。関係者に聞いたところ、助言案は総務部が作成し、環境生活部は他の関連部署と同様、一つの部として関わっているような状況であったことがわかっています。調整委員会の分掌を有しない総務部を、知事の意向にそった助言となるよう指示し、つくらせ、表向きだけ「環境生活部」にしたことは、極めて恣意的であり、行政の中立性や公平性を棄損する重大な問題です。前述したように、人権条例施行後の調整委員会の答申を、全面採用した説示を作成した環境生活部が、ここまで歪み、知事に優位となる助言を作成するわけがない。とてつもない恣意的運用を現知事が行っています。

⑨排外主義者から「支持」される、人権先進県の「三重県」知事
 知事が今回の国籍要件復活の検討を始めて以降、三重県内に関する外国籍者への差別やヘイトスピーチ、排外主義に関する投稿が激増していることが、モニタリングにより明らかになっています。前代未聞であり、知事の影響であることは間違いありません。
 また、これまでヘイトスピーチや排外主義を主張しているSNSのアカウントが、今回の件に関して知事を応援している投稿も相次いでいるとのことで、前代未聞の問題が起きています。県では、ネット上の差別の解決を目的とした事業を展開しているにも関わらず、知事が三重県に関する差別やヘイトスピーチ、排外主義を横行させる状況を招いており、これだけでも、明確な差別の助長と「不当な差別」に該当します。
三重県知事たる行政の長が、排外主義やヘイトスピーチを発信しているアカウントから指示・応援されています。

 端的に申し上げて行政の長が法令をないがしろにした時点で「不適格」である、以上です。

1件のコメント

  1. この間の詳細な経過や問題点がよくわかりました。なぜこの知事が、この県職員採用の国籍要件にここまで拘るのかが見えてこなかったのですが、その背景が少し見えてきました。特に、<知事のことを語る時、いい話は出てきません>に列記されたパワハラ気質などの行状のいくつか。<調整委員会の分掌を有しない「総務部」が助言に関与するというあり得ない事態>のことなどの記述から、この知事の正体や背後の思惑が浮かんできます。こういったことが他の政策や事業への影響がどこまであるのかはわかりませんが、懸念材料です。今後の展開や闘い方は、議会や県内外の動きが関係するかと思います。私自身は、直接的な関りはできませんが、エールを送らせてもらいます。

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